近ごろの冷凍食品の種類の多さやおいしさには、目を見張るものがある。いまや私たちの暮らしに欠かせない、便利でおいしい冷凍食品は、優れた冷凍技術が支えている。その中でも、品質を維持する画期的な技術として「不凍素材」が注目されている。
いまや花盛りの冷凍食品
2016年、フランスの冷凍食品専門店「ピカール」が東京に出店して話題にもなったが、近頃の冷凍食品の種類の多さには圧倒される。スープから具材まで一体化した麺やふわふわのオムライスなど、少し前では考えられなかったような商品が目白押しだ。日本人1人年間あたりの冷凍食品の消費量は20キログラムを超えており、冷凍食品は私たちの食生活に欠かせない存在になっている。
冷凍食品とは、長期保存を目的として-18℃以下で冷凍された加工食品のこと。業務用から家庭用までさまざまなタイプがあるが、大別すると素材をそのまま冷凍したものと調理食品になる。
日本では、調理食品の生産量や種類が圧倒的に多いのが特徴だ。生産量の多いのはコロッケやハンバーグ、うどん、チャーハンなど。家庭では、冷凍食品はお弁当のおかずとして人気が高いが、近ごろでは主食の麺類やご飯類の人気が増している。日本冷凍食品協会が公表した2016年の冷凍食品国内生産ランキングでは、1位がコロッケ、2位がうどん、3位が炒飯で、炒飯の生産量が前年より急上昇した。
氷の結晶が品質を低下させる
日本で冷凍食品が多く出回るようになったのは、1960年代のこと。そのきっかけは、1964年の東京オリンピックのときに選手村で使われたことだった。
ただ、そのころの冷凍技術では品質の低下がよく起こっていた。ある一定の年代以上の人には、冷凍食品はおいしくないというイメージがあるかもしれない。その原因は食品中の水分にある。
初期の冷凍食品は「緩慢凍結法」といって、食品をゆっくりと凍らせていた。食品中の水分は-1℃から凍り始め、-5℃でほぼ凍結する。この温度帯を「最大氷結晶生成温度帯」という。この温度帯をゆっくり通ると氷の結晶は大きくなり、食品の組織を傷つけてしまう。そうなると解凍したときに大量のドリップ(水分)が出てしまい、旨味が流出する。また、歯触りの変化や形くずれが起こってしまう。