HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:ハサップ)は、諸外国で導入が進められている食品安全管理手法であり、日本でも普及推進が図られてきた。しかし、大規模事業者での導入が約9割であるのに対し、中小事業者では約3割に留まっている。
導入が進まない背景には、「施設設備にコストがかかる」といった誤解や「推進や指導、助言をする人材がいない」といった事情が挙げられているが、最大の理由は、義務化されていないため導入しなくても支障がないからということである。
だが、そのHACCPが制度化されようとしている。本記事では、制度化に向けた動きと、2016年にいち早く策定された民間の「食品安全管理規格」(JFS規格)について紹介したい。
制度化目前、日本版HACCPに2レベルの基準
厚生労働省は、2016年に「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会」の報告をまとめ、HACCPの制度化の方針を示した。食品の製造・加工、調理、販売などフードチェーンを構成するすべての事業者(農場などは除く)を対象として、一般衛生管理の実効性を上げ、食品の危害要因を分析して重要な点を管理する手法であるHACCPを取り入れて食品の安全性の向上を図り、2017年度末には制度化することを目指している。
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近年、野菜加工品や刻み海苔による食中毒が発生した。これを受け、食品衛生法の許可業種でない事業者にも営業の届出を創設して、すべての事業者を対象に対応していく方針である。
すべての事業者が対象であるが、国際規格を策定するコーデックス委員会の「HACCP 7原則12手順」(表参照)を原則通りに適用する「基準A」と、弾力的な運用が認められる「基準B」が示されており、飲食店などの小規模事業者については基準BによりHACCPを取り入れていく予定である。
特に飲食店については、原則や手順を簡略化して、取り組んでいる衛生管理とメニューに応じた衛生管理の注意点を明確にした衛生管理計画を作成して、実施し、記録・確認することを例示している(厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた食品衛生管理の手引き 飲食店編」より)。