「眠いけれど食べたい体」で起きているホルモン変化

睡眠不足と食欲の関係を探る(後篇)

2017.11.17(Fri)漆原 次郎

――つまり、徹夜するなどで睡眠不足に陥ったとき、やけに空腹を感じているのは、体内でPYYなどのホルモンがあまり出てきていないからということでしょうか?

有竹 その瞬間についてはそうだと思います。ただし、長期的に見て、睡眠時間が短いことによる体への影響を考えた場合は、ホルモン分泌量の変化の影響がどれほどのものか、検討の余地があります。「PYYの分泌量が下がっているからだ」とさらっと言えるかというと、本当にそうか考える必要があると思います。

 今回の実験では、直腸の体温についても1時間ごとに測定しましたが、3.5時間睡眠のほうが体温が低くなる傾向がありました。有意差の見られる時間帯も複数ありました。体温の調整と、睡眠・覚醒の調整はともに脳の視床下部という部分でされていますが、脳の機能低下、たとえば気分の変調なども影響して、肥満リスクにつながるのではないかという研究者もいます。

――今回の実験の結果をまとめると、どのようなことが言えるでしょうか?

有竹 3.5時間睡眠でも7時間睡眠でも全体としてのエネルギー消費量は変わらないのに、食欲が増すことを示すデータが、特定のホルモン分泌量という客観的指標でも、空腹感などの主観的指標でも示されました。この状態が続いた場合、肥満のリスクは高まると思います。

運動、代謝、睡眠の関係にも光を当てる

――今後、このテーマの研究には、どのような発展が考えられますか?

有竹 運動にも目を向けて、研究を行っています。

 睡眠時間が短いと肥満リスクが高まる一方で、良質の睡眠をとれれば健康増進につながると考えられます。一般的に、良質な睡眠をとるための手段として運動が言われていますが、どのように運動すると効果的なのかを実験で調べました。これも、早稲田大学(当時)の内田直教授や、花王の日比壮信主任研究員たちとともに行った研究です。

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