光冨:肺がんの原因でよく知られているのはタバコですよね。喫煙の害は、みなさんもよくご存知だと思います。しかし、肺腺がんに関して言うと、タバコとの関連はもちろんあるものの、比較的低いと言われています。
女性の肺がんは、多くが肺腺がんです。日本人の女性は海外と比べて喫煙者が少ないとされている中で、「肺がんの原因は何か」という研究も行われています。副流煙(周囲の人の煙を吸ってしまう)も原因としてなくはないですが、受動喫煙の有無で肺がんに罹る差は、約1.3倍で、そんなに大きくありません。
では、「肺がんの中でも特に、タバコを吸わない人が肺がんに罹るのはなぜなのか」というと、今のところはっきりしたことは分かっていません。諸説はありますが、まだ研究の段階です。
柳澤:肺がんの原因が分かっていないということに驚かれる方も多いかもしれませんね。
光冨:一般的に「肺がん=喫煙が原因」というイメージが強いため、なかには原因が分からない肺がんもあるということ自体に困惑される方もいるかもしれません。しかしこれは、他の臓器のがんでも同様ですよね。例えば「乳がんの原因は?」と聞かれても、はっきりしたことは分かりませんよね。これだという原因や予防策が分かっていないものがほとんどです。
柳澤:心配になる方も多いかと思いますが、逆に、光冨先生のような世界的な肺がん専門医から「原因不明の場合もある」というコメントをいただいて、安心される方もいると思います。というのも、非喫煙者や、若くして肺がんになった方の中には、「タバコを吸っていないのになぜ?」という思いにかられたり、周囲から「タバコを吸っていたのだろうから自業自得」のように思われたりと、“世間の誤解”から悩まれる方も多いですから。
光冨:そうですね。喫煙の害を忘れてはいけませんが、喫煙とは関係なく罹る肺がんもあるということを覚えておいていただければと思います。