文中敬称略
今年のロシアを振り返るにはまだ早い。大晦日まで1か月弱のみとはいえ、その間で何が起こるか分からないのがロシアの通例。あまつさえ、大統領のヴラジーミル・プーチン来日という、日本にとっての大イベントも控えている。
それにしても過去半年あまりを見れば、これだけロシアがメディアで露出度を一挙にかつ長々と高めたという時期もソ連崩壊前後から絶えて久しくなかった。
日露関係のみならず、ウクライナや中東を巡っての虚々実々、それがもたらす対欧・対米関係での緊張、そしてロシアが加害者・被害者双方で立ち回る石油の生産と価格の問題などで報道量は増える一方だった。
最近でこそ、多分今年最大のニュースとなる米大統領選とその結果に押されはしたが、その大統領選ですら、ロシアのサイバーアタックによる介入で帰趨が左右されたとか報じまくられたのだから、すべての元締めと目されるプーチン大統領の存在感は良くも悪くも増すばかりだ。
プーチンとオバマを秤にかけたトランプ
当選したドナルド・トランプは選挙戦中に、「プーチンはバラク・オバマ(米大統領)より指導者として優れている」と発言していた。親露的な態度と捉えられているが、親露と言うよりも、遠目に眺めてプーチンとオバマの指導者としての能力を比較したならこうだ、という月旦に聞こえる。
「彼は国を動かしており、この国で私たちが擁している人物とは違い、少なくとも彼は指導者だ・・・」(参照1、2)。誰かにそう吹き込まれたとしても、それを肯ったトランプも結構まともな判断力を持った仁ではないか、といささか感心したものだ。
対外発言でのメリハリや、その結果を見れば、ウクライナ問題発生この方、両者の技量の差はかなりはっきりとしたものになったように見える。
最近では、今やシリア問題に絡む中東の利害関係者は米国ではなくロシアに接近するようになり、先週まとまったOPEC(石油輸出国機構)の減産決定でもサウジアラビアとイランを妥協に持ち込んだのは実はプーチンの功績だった、などと西側のメディアにまで書かれる始末(参照1、2)。
あえて負け惜しみで「他の多くの論者と同様に」と前置きしつつ、トランプが大統領選に勝つとは予想できなかったと白状する。何せ彼は米英の有力メディアで、これ以上あるまいと思われるほど散々叩かれていたのだから。
思えば、泡沫の彼と本命のヒラリー・クリントンの支持率で6月頃には2桁だった差が、終盤には1桁に縮まり接戦になっていったことが不思議といえば不思議ではあった。今となれば、その理由は諸報道で多々挙げられている通り(なのだろう・・・)。