日本の対ロ接近警戒=プーチン大統領が東アジア重視-米議会報告

露ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで挨拶を交わす安倍首相(左)とプーチン露大統領(右、2016年9月3日撮影)〔AFPBB News

文中敬称略

 9月中旬に行われたロシア下院選挙は、周知の通り与党の圧勝という結果に終わった。50%を切るような投票率の低下に助けられた結果だ、と米紙は書く。だが、米国でも投票率の40%台は珍しくもないから、選挙への無関心についてそう偉そうなことをあまり言えたものでもあるまい。

 その選挙直前の週に、日本のメディア関係の方々とモスクワを訪れる機会があり、選挙戦終盤の日本のイメージとは程遠いその街で、ロシアの政治や経済の専門家たちから様々な意見を聴取して回った。

 9月初めにヴラジヴォストーク(ウラジオストク)で行われた日露首脳会談からまだ日も浅く、12月のロシア大統領V.プーチンの訪日が公表された後だったから、面談相手への質問は何と言っても日露関係、つまりは領土問題と平和条約交渉に集中する。

 当たり前の話とはいえ、4島は多分日本に返還されるよ、などと頼もしいことを言ってくれる相手は皆無。その多くが、「プーチンは資金や投資ではなく、信頼関係を重視する。この信頼関係がなければ話はまとまらない」と強調する。経済支援という1990年代の発想はもはや通用しない、と念も押してくる。

相互信頼構築の皮算用

 経済協力にいくら努めても4島が戻ってくるわけではない、となれば、日本で指摘される「ロシアが経済だけを食い逃げする」「いいとこ取りで終わる」という議論がもっともらしく聞こえもする。

 しかし、一歩下がって考えれば、彼らがそのつもりなら、最初から「経済と島はバーターではない」などと自ら強調する必要もないはずではないか。

 彼らの力点は一様に「信頼関係」に置かれている。「その点に日本は十分な注意を払っていないようだが」として、外交誌編集長でロシア外交のブレーンの1人でもあるF.ルキヤーノフは次のように解説する。

 「過去20年以上にわたって(それは日本の責任でもないが)欧米がロシアへの約束を何度か破り、それが理由でロシアは誰も信用できなくなってしまった」

 「それを考えれば、重要なのは平和条約締結という形ではなくその実体(相互信頼)に求められる。領土問題に関するプーチンの基本姿勢は『両国間の関係の質的変化を伴わねば、その解決はあり得ない』なのだ」

 「それは、ロシアがこれまでに、中国、カザフスタン、エストニア、ノルウェーといった国々とどう領土問題を解決してきたかを見てみれば分かるはずだ。経済関係などを通じて信頼関係が醸成されれば、それが結果的に政治関係の緊張緩和につながっていく」

 こうして両国間の相互信頼を強調するところは、ロシア人とこれまで付き合ってきた経験値に照らし合わせると確かにその通りと頷けなくもない。

 肝胆相照らす、とまではいかないにしても、気持ちが通じ合える仲にならねば・・・飲んで無防備な泥酔状態に互いに陥る仲にでもならねば・・・仕事なんぞできない、である。