注射を悪者扱いすべきでない

 こうした治療の流れは、医者が個人の状況に合わせ、決定していく。副作用の出現には個人差が大きいからだ。

 ここで私が声を大にして言いたいのは、決して鉄剤の注射が悪いということではない、ということだ。

 貧血は病気であり、鉄剤注射はドーピングではない。スポーツ選手に限らず、やはり鉄剤の内服による副作用である吐き気がひどく、内服できない人は多い。そんな人に鉄剤の注射は危険だから、内服しろというのは酷でしかない。

 貧血が競技成績に直接影響を及ぼすスポーツ選手にとっては、深刻な問題となることは容易に想像できる。

 日本の貧血問題は深刻だ(詳しくは、拙著『貧血大国・日本』を参照いただきたい)。

 スポーツ選手に限らず、日頃運動をする人、女性、妊婦、そして多くの日本人にとっても貧血は大きな問題となっている。鉄の過剰を危惧する前に、まず貧血について正しく知り、貧血改善に取り組むことの重要性を理解すべきなのではないだろうか。