アスリートが貧血になりやすい理由
スポーツ選手は貧血になりやすい。これは、古くから指摘されている。例えば、昭和61(1986)年に行われたアジア競技大会の日本代表選手の、女子の22.5%、男子の7.5%が貧血だった。
平成8(1996)年の国民体育大会に出場した社会人選手の多くも貧血で、その比率は、女子23.8%、男子7.3%だったという。貧血は、スポーツ選手における内科的疾患として最たる疾患と言っても過言ではない。
だが、スポーツ選手の多くは、貧血にもかかわらず、自身の不調を「コンディション調整がうまくいっていないからだ」と判断している。貧血になりやすいことを知らないからだろう。では、どうしてスポーツ選手は貧血になりやすいのだろう?
1つ目に、筋肉量が多さが挙げられる。
筋肉は多くの酸素を消費する。その酸素を運ぶヘモグロビンの主成分は鉄である。そのため、筋肉量が多いスポーツ選手はより多くの鉄が必要となり、結果として貧血に陥りやすくなる。
2つ目に、激しい運動に伴う急激な発汗がある。
汗には、あらゆる種類のミネラルが含まれている。鉄もそのうちの一つだ。普段は、汗をかいても再吸収の機構が働く。だが、急激に激しい運動をすると、その再吸収機構が追いつかなくなり、鉄が喪失されてしまうのだ。
3つ目は、運動によって足の裏に衝撃が加わり、赤血球が壊れてしまう点だ。
脊髄で作られる赤血球の数よりも、壊れる数の方が多くなることによって、貧血は引き起こされる。
特に、剣道、サッカー、バスケットボール、バレーボール、マラソンや長距離走などのスポーツでは、貧血が起こりやすい。この貧血を、「運動性溶血性貧血」とも言われる。
4つ目に、全身を循環する血液量を増やそうとした結果、ヘモグロビンが薄まってしまう点が挙げられる。
運動すると、体は全身にくまなく血液を送ろうとする。すると、血漿とよばれる血液の液体成分が増える。その一方で、ヘモグロビン量は増加しない。そのため、見かけ上ヘモグロビンの濃度は低くなり、貧血となる。これを、「希釈性貧血」と呼ぶ。