英外科医、がん手術を世界初のVRライブストリーミング

手術中の医師(フランスのパリで)〔AFPBB News

 今年の3月6日。

 せっかくの自分の誕生日だというのに、私は病院のベッドの上にいました。それも、お世話になっているがん専門病院ではなく、とある病院の循環器科の病棟にいたのです。

 それはいったいなぜだったのでしょうか?

 私は、希少がんである「肉腫(サルコーマ)」の患者です。おかげさまで、昨年の2月に「10年生存」を達成することができました。とはいうものの、これまでの11年間に19度の手術と6度の放射線治療、5クールの殺細胞性の抗がん剤治療を受けました。

分子標的薬に挑戦

 そして今年に入り、抗がん剤の一種である分子標的薬にも挑戦しています。

 このように、私は「がん」の闘病を続けながら、東京大学大学院経済学研究科の松井彰彦教授の「社会的障害の経済理論・実証研究」(REASE)の研究班のメンバーとして、がんの長期療養者の当事者研究をさせていただいています。

 肉腫(サルコーマ)は概して抗がん剤が効きにくいこともあり(小児の肉腫にはよく効くものが多い)、私が初めて「殺細胞性」の抗がん剤に挑戦したのは、がんに罹患してから10年を経た昨年の6月のことでした。

 右肺の腫瘍が大きくなり、右肺が無気肺(肺に空気が入らない状態になること)になったことが、一番の理由でした。そして、当初からの予定であった5クール目の投与を終了したのが、9月の終わりの頃でした。

 それから、それなりに体調の良い10月と11月を過ごしました。しかし、12月に入ると体調が悪化し、まずは6度目の放射線治療を2週間ほど受けました。そして、年末年始のお正月休みを返上して修士論文の執筆に励み、おかげさまで今年の1月半ばに書き上げることができました。