あまり強調されない事実ですが、現在の日本(特に東京の理工系の)高等教育研究機関の長には特定高校の出身者が複数就任しています。
具体的にいうなら、東京大学の五神眞総長と東京工業大学の三島良直学長は、科学教育に顕著な特徴を持つ同じ高校の出身者なのです。
どうしてそういうことが起きているのか?
学閥といったことではなく、専門研究能力も、教育やガバナンスの力も、ともに大きく育てる「ある秘密」が、この背後に隠れているのです。
スポーツ人材育成から考える
科学教育の問題を考えるまえに、やや突飛に思うかもしれませんが、スポーツを例に挙げてみたいと思います。
中学でも高校でも大学でも、運動部は先輩後輩のつながりが強い。礼儀作法が厳しいといったこともあるかもしれませんが、人的なつながりの強固さは、一部大学運動部で見られるように就職その他ライフロングにつながっているケースもあるくらいで、なまなかなものではありません。
練習や合宿を考えてみましょう。
現役が頑張るのは当然ですが、コンパなどにはOBもやって来ます。熱心なOBの中にはコーチなどに就任する人もいるでしょう。またもっと小規模なレベルでも、先輩が後輩に手取り足取り教える、あるいは後輩が先輩に相談に行ったりするというのは、ごくごく日常的な光景と思います。
スポーツの分野では普通に見られるこうしたこと、私の仕事領域、西洋音楽の分野にもない話ではありません。
何か困ったことがあったら先輩に相談します。また後輩にピンチヒッターなどを頼むことも珍しくありません。
そういうつながりはどこの世界でも普通にあるものだと思うのですが・・・その「あり方」が、サイエンスや研究など含め、やや特徴的な教育を実践している1つに、私立武蔵高等学校があります。