このコラムが公開される2月26日はその昔起きた2.26事件の当日でもありますが、2016年の2.26は東京大学の入試、二次試験の実施日にあたっています。
入試や偏差値といったことも念頭におきながら、ノーベル賞超級の科学的な仕事、発見を進めていくうえでのポイント、またそこから振り返って人材育成を考えるうえでも参考になる「ノーベル賞業績」を今回はひとつ取り上げてみたいと思います。
さて、いきなり話が変わるようですが、コロンブスがアメリカ大陸を発見したとか、マゼランが世界周航したとかいう話が、子供向けには語られます。
しかしコロンブスが「発見」などする以前から、北極圏、グリーンランド近辺を伝って米大陸北東端と往復する漁民などはいたらしいし、ネイティブアメリカンも南北アメリカ大陸には太古の昔から住んでいた。
「発見」はあくまでヨーロッパ人、ないし欧州社会全体が米大陸と交通し始めたということが圧倒的に大きいわけです。
ではどうしてそれが可能になったのか?
航海術、羅針盤、そして何より、それらを活用して大西洋を横断できる船の建造技術が圧倒的だったわけです。
で、「重力波」観測をめぐる問題にも、これと同様のことを感じるのです。
陽子の直径の1000分の1、1万分の1といった極微の距離が測れさらにその微細なゆがみの時間変動が波として計ることができる!
その事実、つまりイノベーションにこそ驚くべきと思うのです。
方法の確立こそが本質的
日本の世の中ではいまだに、何ちゃら細胞があるとかないとか、詐欺が正しかったとかそれだったらどうだとかいった寝言で商売する人もいるようですが、端的にそんなものは顧慮の対象にならないもので、科学的には一切の意味がありません。
アメリゴ・ヴェスプッチやコロンブスの新大陸は、同じ航路で欧州の人々が自在に、もちろん難破などはしたと思いますが少なくともコンスタントに、頻繁にヒト・モノ・カネが新旧大陸間を往復するようになった、その端緒となったことが圧倒的なのです。
善し悪しでものは言っていません。この「発見」で三角貿易が生まれ、アフリカからの「奴隷」輸出も始まり、日本国内で通用する弁護士資格を持つ議員の外交感覚ゼロの発言が問題になっているようですが、何にしろグローバルな歴史が動き始めた。その事実を直視するべきでしょう。
「アメリカを見つけた」ことだけを取り沙汰しても大した意味はないのです。新大陸と自在に往復し、そこに眠る資源を見つけ、あるいは原住民を暴力的に支配し、乱開発で環境を破壊し・・・。そういう全体を真っ直ぐ見つめる必要があるでしょう。
それらすべて、航海の技術ならびに大洋のど真ん中で自分がどこにいるかを知る技術、今日風に言えばGPSですが、当時で言えば天文の観測技術であり羅針盤の技術があって、初めて可能になったものです。
技術自体はインタクト、無傷であって人道的な目的にも戦争にも使うことができます。そうした技術の本質を見るのが、先端的な科学の発見に際して私たちが注意すべき第一の点であること。
これを私は、自分が大学で学ぶ専門を物理に決めた19歳の年に強く感じさせられた経験があります。