ドイツで「第5の味」を見逃さなかった日本人

和食を創ってきたダシの“うま味”再入門

2016.01.29(Fri)池田 亜希子

 うま味の相乗効果は、食べたときの満足感を増すため、食べ過ぎを防ぐ。また、塩分を控えても美味しく食べられるという。

 さらに同社フロンティア研究所の畝山寿之氏らの研究によって、うま味のさまざまな機能が明らかになり始めている。

 入院患者に栄養を投与するのに、経口で行った方が静脈注射で行った場合よりも患者の栄養状態が良い。その原因を調べたところ、胃や腸にもグルタミン酸受容体があり、この受容体を通して口から入ってきたグルタミン酸は消化吸収を促進していたのだ。

「グルタミン酸は自然界に多く存在しているアミノ酸です。それを手がかりに生体のさまざまな機能を制御するのは、理にかなっていると思います」と畝山氏。今後の研究成果が楽しみだ。

うま味を「旨い」と感じるための食育を

 人間が甘味や塩味を好ましく感じるのは、体が必要としている成分の味だからだ。一方、本来、苦味は食品が危険なことを、酸味は腐っていることを知らせる好ましくない味である。

 では、うま味はどうなのか。「うま味はグルタミン酸やアスパラギン酸といったアミノ酸や、イノシン酸やグアニル酸などの核酸が示す味です。どれも私たちの体をつくっている物質です」と二宮氏。うま味は、特徴のある味質(基本味)に加えて、素材の味や香りを立てる働きもあり、これらが相まって美味しさとなっていく。つまり、うま味は好ましい味ということになる。

 しかし、食品によっては苦みや酸味が好ましいと感じられるように、人間の場合、食習慣が味の好みに大きく影響する。現代は、うま味の感覚を知らない世代が増えており、二宮氏も美味しさとはなにかを知ってもらい食事の大切さを伝える食育に力を入れなくてはならないと感じている。

 池田博士は、留学先のドイツで人々の体格がよいことに驚いた。それがきっかけで、「国民の健康には、美味しく食べることが必要だ」と考え、うま味の研究を始めた。

 世界遺産認定の前から、日本は和食の良さを世界に向け発信し続けてきた。そんな日本の食卓はいま、池田博士の願いに叶っているのだろうか。

いかがでしたか?
JBpress をブックマークしましょう!
Twitterで @JBpress をフォローしましょう!
Facebookページ に「いいね」お願いします!

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る