農業による地域振興の動きが活発化している。後押しするのは、国内で始まった地理的表示保護などの制度や、生産・加工・販売などを一貫して行う「6次産業化」への支援などだ。各地で起こりつつある取り組みについてみてみたい。

農業分野で知的財産化が進む

 これまで農業者の努力によって多くの技術やノウハウが生み出されてきたが、その多くは権利化されず地域社会の中で共有されてきた。だが最近では、農業の現場で開発された技術を「知的財産」として取り扱い、農業者や農業者団体、企業、研究機関などが特許権などを取得する動きが一部に見られるようになってきている。

 農業分野の知的財産には、たとえば、新品種の開発者に与えられる「育成者権」、栽培技術やノウハウ、農業資材などの発明者や考案者に与えられる「特許権」や「実用新案権」、商品につけるマークやブランドを保護する「商標権」、農業器具などの形状を保護する「意匠権」などさまざまなものがある。

 農業者などが農業を知的財産として捉えるようになってきた背景には、グローバル化が進展し、高付加価値の農作物や栽培技術の海外流出が懸念されていること、世界で農作物の品質が向上し、“質”でのグローバル競争が激化していることなどがある。

地理的表示保護(GI)制度スタート

 上で示したさまざまな知的財産のうち、新制度が始まった商標権について取り上げたい。近年、地域の特産品を他の地域のものと差別化を図るための地域ブランドづくりが全国的にさかんになっている。

 たとえば、「長崎カステラ」や「関あじ」「松阪牛」などのように、産地名と商品名からなる商標がある。これらは一定の条件を満たせば商標登録できる「地域団体商標」によるものだ。