ドイツで「第5の味」を見逃さなかった日本人

和食を創ってきたダシの“うま味”再入門

2016.01.29(Fri)池田 亜希子

 ダシに含まれるうま味成分以外の味を「雑味」といって、料理人は嫌う。雑味をなくすために重要なのが、乾燥昆布や鰹節のつくり方と、そのダシの取り方だ。昆布は、天日に干して乾燥させた後、「蔵囲い」といわれる熟成期間を経てつくられている。鰹節づくりでは、煮た鰹を焙乾して脂肪を落とした後、さらにカビ付けして残っている脂質を分解させる。

 ダシの取り方にも注意しなければならない。合わせダシは、水に昆布を入れ、火にかけ沸騰前に昆布を取り出し、そこへ鰹節を入れ沸騰したらすぐに火を止め、灰汁をとりキッチンペーパーや布巾でこす。こうして取った純粋なうま味のダシで、吸い物をつくる。

ドイツでうま味の正体に気づいた日本人

「日本にはこれだけ純粋なうま味があるのだから、うま味成分を世界で初めて突き止めたのが日本人だというのにも納得がいきます」と、同社広報部学術グループの荻原定彦氏は話す。

 1907年、池田菊苗博士が乾燥昆布12 キログラムからグルタミン酸30 グラムを抽出し、それがうま味成分であるという結論に至った。池田博士は、科学技術を学ぶために国費で留学した先のドイツで、ブロッコリーやチーズを食べ、日本で経験したことのある味を感じた。帰国後、それが昆布ダシの味だと分かり、抽出を試み成功した。

 グルタミン酸そのものは、1866年にドイツの化学者であるハインリヒ・リットハウゼンによってすでに発見されていた。しかし、これがうま味の正体だということにリットハウゼンは気づくことはなかった。

 というのもグルタミン酸はその名の通り“酸”で、舐めると酸っぱいからだ。それが、昆布の中にあるナトリウム(Na)やカリウム(K)とともに塩(えん)をつくると、うま味を感じられるようになる。このことを池田博士は実験によって明らかにした。

 舌にあるうま味受容体につくのは、ナトリウムやカリウムでなくグルタミン酸であることから、うま味の正体はグルタミン酸である。

 うま味成分としては、他にイノシン酸やグアニル酸などが知られている。イノシン酸は児玉新太郎、グア二ル酸は國中明というどちらも日本人によって発見された。これらのうま味成分を製品化したものがうま味調味料であり、この功績により池田博士は特許庁の十大発明家に選定されている。

それぞれグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸のナトリウム塩。水素(H)だったところが、ナトリウム(Na)に置き換わってナトリウム塩になる
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食べ過ぎ防止や、栄養の消化吸収促進の機能も

「うま味は、他の味や香りを引き立てます。とくに同じうま味成分であるグルタミン酸とイノシン酸は2つが混ざると、うま味が7~8倍にも感じられるのです。これをうま味の相乗効果といいます」と荻原氏は、うま味の面白い性質を説明する。

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