「2年1単位のモジュール化や27歳でリーダー職級を目指すことは、女性リーダーの育成に限らず、企業の人材育成全体においても有効な施策だと思っています。それぞれの時期の成長のゴールを明確にし、そのゴールに到達したかどうかジャッジした上で次のゴールをセットするというサイクルを回すことで、よりスピード感のあるリーダー人材の育成が行えるはず。これができる組織では女性が成長し活躍できるだけでなく、男性も今以上に成長し、活躍できると考えています」(同)
人材を育成する側にとっても、明確なキャリアパスを作った上で育成する方がやりやすいのは明らか。それは企業自体の強化にもつながるはずだ。
海外企業の取り組みに学ぶ育成のモデル
女性の人材活用において、海外ではどのような実情なのだろうか。石原氏は「海外企業の方が、女性リーダーが多いのは確かです。ただ、ヨーロッパの先進国などでも『家事・育児は基本的に女性がやる』という考えは根強いものがあり、根本的な意識は日本と大きな差がないように感じます」という。それでも女性の活躍が目立つのは、置かれている環境による違いも大きいようだ。
「アメリカやヨーロッパの企業は、様々な国籍や文化、あるいはバックグラウンドの人と協働したり、交渉したりする場面が多くなります。そこで改めて重要になるのは、多様性を受容し、多様性から価値を生み出す組織能力です。その意識が海外ではより強いため、早くから男女や国籍にかかわらず人材を育てる環境づくりが続けられてきたのではないでしょうか」(同)
イギリスなどでは、通常1人が行う業務をシェアして2人で行う「ワークシェアリング」、1週間の労働日数を短縮し、1日の労働時間を長くする「圧縮労働時間制」などが導入されている。そして企業単体でも、女性のリーダーを増やす努力が続けられている。
「例えば、ビジネススクールにも女性だけを対象にしたリーダーシップのプログラム等が準備されているなど、リーダーとして活躍する可能性のある女性たちへの働きかけ・指導も実践されていますね」(同)
企業がシステムや体制を整えるだけでなく、女性自身への意識改革も行う。石原氏も、働く女性や女子学生に向けて、キャリアに対する考え方やプランの立て方を講演している。
「キャリアを積んだ女性リーダーが増えるということは、今より『個人の力を信頼した社会』になるということだと思います。それは、個人の持つ実績や力をより客観的に測り、価値創出につなげようとする社会と言えるかもしれません」(同)
企業の舵を取るリーダーたちの多様さ。人材を評価・育成する上での視点の多様さ。そして、多様な人たちがキャリアを構築していける環境。これらを実現する上で、女性リーダーを育成するシステムの構築は、重要なポイントだと言えるだろう。