統合医療というちょっと聞き慣れない医療が注目を集めている。この治療により末期がんで余命数カ月と宣告された患者が次第に快方に向かい、ついにはがん細胞がきれいさっぱりなくなってしまったという例がいくつも出てきているのだ。
死に直面して生きることの意味を知る
今回は日本におけるそうした統合医療の草分け的存在であり、患者さんにとっては“奇跡”を次々と生み出している東京女子医大の川嶋朗准教授にお話を聞く機会があった。
川嶋准教授は腎臓病が専門で、米国のハーバード大学に留学経験もある。最近、『医者が教える 人が死ぬときに後悔する 34のリスト』(アスコム、税抜き1100円)を出版して話題になった。
問 早速本題に入ります。先生の提唱されているクオリティー・オブ・デス(QOD)という考え方は面白いですね。クオリティー・オブ・ライフ(QOL)はよく言われてきましたが、死に方の質を上げようというのはとても斬新です。
人間は死を意識して初めて生きていることの大切さを本当の意味で知ることができ、生きている間の時をムダにせず充実した生活を送られるようになる・・・。
この発想が先生の中で生まれたきっかけは何ですか。末期がんの患者さんたちと向き合われてきた実体験ですよね。
答 そうです。私のところには末期がんなどほかの病院から見放された患者さんがたくさんやって来ます。そういう患者さんたちに接していくうち、人間は死を意識したときに後悔がたくさんあることを知ったのです。
例えば「もっと生活習慣を変えておけばよかった」とか、「人を憎んだり恨んだりしなければよかった」「しり込みせず自分の夢に挑戦しておけばよかった」などです。
私たち人間は何もないときには死を意識しません。だから時間はいくらでもあるように勘違いしてしまう。でも、いざ死というものが目の前に迫ってくると、人生の本当の意味を考えるようになるんです。
問 そのときはもう取り返しがつかない状況になってしまっている。人間とは何とも悲しい存在ですね。