(英エコノミスト誌 2013年10月26日号)

問題は政府の債務だけではない。ゾンビ企業や払いきれない借金を負う家計があふれている。

「祝!定年生活」、通行人に1ユーロ配る ドイツ

ユーロ圏の債務危機はソブリン債務危機だけではない〔AFPBB News

 今から15カ月前の2012年7月、欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は、単一通貨ユーロを守るためなら「何でもする」と約束した。この約束を果たすために創設された債券購入制度が実際に試されたことはまだないが、ソブリン債の利回りは下落した。

 ユーロ圏の混乱は、急性の危機から慢性的な危機へと移行した。

 ドラギ総裁は10月下旬、ユーロを巡る大河物語で2度目の大きな転機となり得る計画を発表した。ECBが2014年後半から監督することになっているユーロ圏の128の大手銀行を対象として、バランスシートの審査を行うというのだ。

 ECBの担当者は「資産内容の査定」の一環として、外部の専門家とともに銀行のバランスシートを精査し始め、融資の質に関する共通の基準を適用する。この手続きの目的は、現時点で存続可能な銀行、資本増強が必要な銀行、つぶすべき銀行を見極めることにある。

 ドラギ総裁は厳格な姿勢で臨まなければならない。ユーロ圏諸国の政治家は、用心深いと言われるドイツの政治家でさえ、銀行のバランスシートをあまり深く調べたがらない。まして銀行に不良債権処理を強いることには消極的だ。銀行がここ数年で購入したすべての国債については、もちろん問題にすべき点がある。

 だが、これまで欧州で見えないところに隠されてきた最たる危険な資産は、民間の資産だ。つまり、家計や企業に対する不良債権である。

ドイツにも隠れた大きな危険がある

 欧州はずっとソブリン債務危機にあると考えられてきたし、実際それは間違っていない。しかし、ユーロ圏が惨事を招いた起源をたどってみると、政府の浪費より民間の過剰な借金に大きな要因がある。

 確かに、ギリシャが苦境に陥ったのは、政府の歳出が多過ぎ、税収が少な過ぎたためだった。しかし、ほかの国では、民間部門の浮かれ過ぎが破綻につながっている。アイルランドとスペインでは住宅ローン、ポルトガルと、こちらもスペインでは、企業の借り入れが原因だった。

 この3カ国は危機の前、家計と企業の債務を合わせると、国内総生産(GDP)の200%をはるかに超えていた。米国(175%)、さらには英国(205%)よりも多かったのだ。

 残念ながら、ユーロ圏はほかの地域と比べ、民間債務の負担軽減が進んでいない。米国では住宅ローンが減損処理され、他国より成長が速いおかげで、家計は好景気の数年間に積み上げた過剰債務の約3分の2を解消した。