国家財政危機が継続しているアメリカでは、国防予算の大幅減額に伴う具体的戦力低下がますます深刻化しつつある。
オバマ政権がアジア重視政策を打ち出しているのに対応して、かつ中国海軍の急速な増強を睨んで、アメリカ海軍は太平洋艦隊を強化する方針を打ち出している。とは言っても、イランやシリア、そしていまだに不安定な北アフリカ情勢を考慮すると、大西洋・地中海方面のアメリカ海軍力を大幅に減らして太平洋方面に差し向けられる状況とは言えない。
オバマ政権下における国防費減額の流れに加えて、強制財政削減措置によって海軍予算も含めて国防予算全体が一律に削減されている中で「アジア重視政策を後押しするために太平洋方面の海軍力を増強する」というのは、「他の地域における弱体化よりも弱体化の度合いを極小に抑える」という意味合いと理解するべきである。
したがって、名実ともに海軍力(航空戦力を含む)や長射程ミサイル戦力を強化し続けている中国軍と比較すると、東アジア(日本周辺から南シナ海にかけて)方面におけるアメリカ海軍力は相対的に弱体化の道をたどっていると言わざるをえない。アメリカ財政が奇跡的に健全化しない限り、この傾向はますます強まることは避けられない。
日本やフィリピンの国防がアメリカ国防予算大幅削減の影響を受ける状況は本コラムでもしばしば指摘しているが、日本やフィリピン以上に深刻な打撃を被る可能性が高いのが、台湾の国防である。
台湾は自主防衛努力を精一杯推し進めているが、日本を本拠地にしているアメリカ海軍や海兵隊の存在は、台湾防衛の左右を決する最大の要素の1つとなっている。つまり、アメリカ海軍力の弱体化は、台湾国防能力を直撃するのである。
念願のP-3C配備実現も米海軍力弱体化の結果
すでにブッシュ政権の時期にアメリカ政府が約束していた対台湾武器供与のいくつかのパッケージのうち、台湾国防当局が待ち望んでいた(そして中国国防当局が強く反発していた)対潜哨戒機P-3Cの第1陣12機の配備が、ようやく2013年9月末に達成された。これまで旧式の対潜哨戒機しか保有していなかった台湾軍にP-3Cが12機加わり(2015年までにはさらに第2陣が加わる予定)中国海軍潜水艦に対抗する能力が飛躍的に強化された。