中国当局の人権弾圧はこのところとどまるところを知らず、である。

 共産党独裁政権は穏健な主張の民主活動家を逮捕し、客観報道の範疇を出ない記事を書いた新聞記者を摘発し、チベットやウイグルの少数民族を文字通り弾圧する。その無法ぶりと非道の実態は前回のこのコラムでも報告した。ところがその中国が国連人権理事会の理事国に立候補しているというのだから驚きである。

 中国のこの動きに国際人権擁護団体の「中国人権」などが反対キャンペーンを打ち上げた。日本にとっても無関心ではいられない動きだと言えよう。

理事国には「最高水準の人権状況」が求められる

 ニューヨークと香港に拠点を置き、中国の人権弾圧を調査して抗議する国際人権団体「中国人権」は10月25日、「中国政府の国連人権理事会入りに反対する」という声明を発表した。

 「国連人権理事会」は国連の主要機関の1つで、名称通り国連加盟国の人権の状況を恒常的に調べて、その改善を進めることを目的とする組織である。深刻な人権侵害には国連として対処することも目的にうたっている。国連人権高等弁務官事務所がその事務局の機能を果たす。要するに国際社会では人権問題について最高の影響力を持つとされる最大規模の組織なのだ。

 この国連人権理事会は以前は「国連人権委員会」と称されていた。その委員会が2006年に発展、解消、拡大という形で現在の理事会となった。人権委員会は53カ国の委員から成っていたが、人権理事会は47の理事国で構成される。その理事国は地域ごとに数が配分され、アジア13、アフリカ13、東ヨーロッパ6などとなっている。

 人権理事会の理事国は、立候補に基づき、総会の無記名投票で過半数(96票以上)を得た国が選ばれる。以前の人権委員会では自国内で人権問題を抱えた国も資格を問われずに選ばれていたが、新しい人権理事会では、理事となる国には「最高水準の人権状況」が求められる。

 だが現実には、その条件も建前だけの虚構となっている。というのは、中国がすでに2006年の当初から理事国となってきたからだ。

 中国は2期も理事を務め、さらに今回も立候補している(理事国の任期は原則3年、毎年3分の1が改選される)。理事国の次回選挙は11月12日の国連総会で実施される。