2.従来のトランスフォーメーションの概要
冷戦間、米軍は、ソ連を封じ込める体制――前方展開戦略――に基づいて配置されていた。1991年のソ連崩壊後、米国はその世界戦略の見直しを迫られた。
米軍の展開態勢見直し(Global Posture Review, GPR)は、海外駐留米軍の体制を根本から見直すもので、QDR2001(2001年に公表された、4年毎の国防政策見直し)において宣言されたのち、2003年11月より正式に開始された。
その基本構想は、次のようなものだ。
(1)共産圏諸国封じ込めのため、その周囲に配置した米軍兵力は時代遅れ
(2)師団(約2万人)ではなく旅団(約4000人)を戦闘単位とし、小型軽量の部隊を急速に展開できるようにする
(3)ITを全面的に活用し、情報収集と命中精度を飛躍的に向上させ、重い砲を減らす
(4)テロ活動と大量破壊兵器の拡散が米国への脅威で、それへの対応に力点を置く
この基本構想は、ソ連崩壊後の米国は相対的に突出した軍事力を保持し、世界の警察官として、全世界に関与する――という前提になっていた。
ちなみに、この一環として、日本でも、(1)沖縄の第3海兵遠征軍司令部、第3海兵師団など8000人をグアムに移転、(2)在韓国の第8軍司令部を廃止する代わりに、小型(約300人)の第1軍団司令部を米ワシントン州から神奈川県の座間に移転すること、が表明された。