東日本大震災被災者支援レポート(5)

東日本大震災による津波で、一面がれきの山と化した水田〔AFPBB News

3.米国・米軍にとっての新たな情勢の出現

 QDR2001が策定された頃に比べ、米国・米軍の戦略環境は以下のように大きな変化を見せ始めた。

(1)日本の没落

 日本が経済的に没落しつつある。今次、東日本大震災は日本の没落を加速する可能性がある。また、政治的には民主党政権が出現し、従来の自民党ほどには米国の意のままにならなくなった。

 米国は日本を、「太平洋の要石(Key Stone of the Pacific)」 と位置づけ重要視してきたが、今後、日本を米国戦略に活用する目算が立ちにくくなりつつある。

(2)中国の台頭と軍事的脅威の顕在化

 米国の当初の対中国政策は、「ヘッジ」と「エンゲージメント」政策の二股を掛けたものだった。

 「ヘッジ」とは、将来、中国が米国の覇権に挑戦する時には、いつでも中国を軍事力で制圧するか、封じ込め得る体制を作ることを指す。

 「エンゲージメント」政策とは共産党独裁国家の中国を米国と同じスタンダードに徐々に変えるために中国と関わることで、経済・社会・人権基準などを米国なみに整合させようと努力することだ。

 しかし、最近、米国は、中国が空母建造に踏み切り、米空母の投入を防ぐ対艦弾道ミサイルの開発を急ぐなど著しい軍拡に鑑み、「ヘッジ」政策に傾きつつある。

(3)米国の凋落

 原因はともかくも、米国の経済は、「世界の警察官」を担うだけの余力を失いつつある。今後10年間で国防予算を最大6000億ドル削減する予定で、陸軍・海兵隊最大約20万人、海軍艦艇最大60隻、空軍戦闘機最大468機を削減するとの報道がある。

(4)イラク・アフガンからの撤退

 バラク・オバマ大統領は、10月21日、イラク駐留米軍部隊を年末までに全面撤収させると発表した。また、6月には、約10万人の規模となっているアフガニスタン駐留米軍を7月より部分撤退し、2012年の夏までに計3万3000人を撤収させる計画を発表した。

 アフガン駐留経費はこれまでに4400億ドル(約35兆円)に達し、米財政に重い負担になっており、残りの部隊も、早晩撤退を余儀なくされるものと思われる。

 イラク・アフガン部隊の撤退は、米国の次なる世界戦略策定を急がせるトリガーになることは間違いないことだろう。