金利上昇でプライベートクレジットに打撃も
2日の米金融市場では、国債相場が急落(長期金利が上昇)し、米準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が後退した。
折悪しく米国では「人工知能(AI)が既存産業の脅威となる」との認識が広まっている。中でもソフトウエア業界が深刻な打撃を被るとの見方が根強い。
ソフトウエアへの「ダメ出し」は多額の資金を提供してきたプライベートクレジット(ノンバンク融資)業界にとっても大きな痛手だ。
プライベートクレジット市場は1.8兆ドル規模に急拡大したが、ソフトウエア業界への融資が嫌気されて、このところ資金の流出が目立ち始めている。
プライベートクレジットのデフォルト(債務不履行)率は現在、3~5%だが、近い将来、15%に上昇するとの指摘がある。
プライベートクレジットの評判は下がる一方だ。
ロイターは2月26日「運用資産30億ドルのヘッジファンド、ルーブリック・キャピタルが、個人投資家から募金を募る一部のプライベートクレジット企業について、会計手法を用いて財務の健全性を粉飾していると投資家宛の書簡で警告した」と報じた。
プライベートクレジットの融資は証券化されて市場に出回り、年金基金や保険企業などが保有しているため、2008年の金融危機の原因となったサブプライム住宅ローンと構図が似ている。
米国では「債権の質」への懸念が高まり、金融株安に拍車がかかっているのだ。
このような状況は2007年のリーマン・ショック前夜を彷彿とさせる。
「金融危機が再来する」と断言するつもりはないが、一度高まった不安心理は消えにくい。このような状況下で原油高に起因するインフレ懸念が再燃すれば、米金融市場が変調をきたす確率が格段に高まってしまうのではないだろうか。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。