日本に対して指向されるハイブリッド戦
さて、中国が台湾に対してこのようなハイブリッド戦を仕掛けて強制的な統一に持ち込もうとする場合、これを容易にするため、日本や米国などの関係諸国にもハイブリッド攻撃手段を指向してくることはまず間違いないだろう。
現在の日本に対する「軍民両用製品」の輸出制限は、既にそのようなハイブリッド戦における一つの段階に入っていると見ることもできる。
具体的には、日本に対してほかにどのようなハイブリッド攻撃手段が指向されると考えたらよいのだろうか。
ハイブリッド攻撃は、単なる嫌がらせではなく、明確な目的の達成のために様々な手段を組み合わせて行われる。
そう考えると、中国が台湾に対して懐柔路線を採るか強硬路線を採るかによって、日本に対するハイブリッド攻撃の様相も変化すると見た方がよいだろう。
懐柔路線においては、台湾の世論をより中国寄りに誘導するため、日台間の相互不信を煽るような工作が考えられる。
このため台湾と日本に軍事的威嚇を行うと同時に、それを煽っているのはそれぞれ日本あるいは台湾であると思わせるような偽情報を拡散するなどの手法が考えられよう。
強硬路線においては、台湾における内乱状態に人民解放軍が介入する場合に、米軍が反中派支援のために対抗的に介入する可能性を排除することが重要になる。
このためには米軍が介入に当たって在日米軍基地を使用できなくなるよう、あらかじめ日米の政治的離間を狙う方策が有効であろう。
具体的には、サイバー攻撃等で日本社会に不安を与えた上で、反米感情や反基地感情を助長するような偽情報拡散や影響工作を仕掛けてくることが考えられる。
経済的には、日米のどちらか一方に利益誘導を行うのと並行して、他方に対しては輸出制限などで厳しい態度に出ることで、双方の離間を図るという手法もあろう。
このように、中国の台湾に対するハイブリッド戦は、同時に日本や米国などに対するハイブリッド戦を伴うのが必然だと考えるべきである。
現在の状況を総合的に観察すれば、そのようなハイブリッド戦は既に始まっていると見ることもできよう。