莫大な投資、回収は不能?

 もちろん今後のことは誰もわからない。だが、たとえば現在、業界世界1位の売り上げと出荷量を誇る宇樹ですら安泰ではない。

 宇樹の人気ロボットG1は基礎販売価格9.9万元、うちモーターコストだけで3.8万元~5.8万元とされる。それに研究開発費やソフトウエア、外装などの部品、塗装、マーケティング開発費などを上乗せすれば、いったいどれほどの利益を確保できるのか。しかも、今後数年内にG1の販売価格は2万元くらいに値下がりするらしい。

 中国の調査会社IT桔子のデータによると、2025年12月27日現在、国内ロボット分野の資金調達件数は610件に達し、2024年比で約3倍増加し、総調達額は570億元を超えた。

 2025年11月までに、約30社の中国ロボット産業チェーン企業が香港証券取引所へ上場申請を提出。だが申請企業の半数以上が依然として赤字状態だ。

 不完全な統計ではあるが、2025年第1~3四半期にIPO申請を急いだ中国ロボット企業のうち、18社の決算報告書が依然として赤字だとされる。赤字の根本原因は主に研究開発費とマーケティング費にあるという。

 人型AIロボット分野は、まだ確たるニーズを形成していない新興市場で、ユーザー教育、ブランド構築、チャネル構築にも資金投入が必要だ。だが技術が完全に成熟しておらず、販売額も値下げしていかねばならない状況で、この産業に投じられた資金がそれに見合うリターンを生み出すことは難しい、と澎湃など中国メディアですら指摘している。

 さて春晩以降、日本人の知人も「中国ロボットがすごい!」と興奮していた。確かに見ごたえのある素敵なロボットたちだった。だが、彼らが自由に感じ判断し行動するフィジカルAIではなく、高度な集団制御技術による木偶であったと知ると、中国は人もロボットも結局、制御、コントロール、支配するのが得意な国なのだな、と冷めた気持ちになった。

 アトムの国に育った私がイメージするロボットは、人の自由がない国では生まれまい、と思ったのだ。

福島 香織(ふくしま・かおり):ジャーナリスト
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『なぜ中国は台湾を併合できないのか』(PHP研究所、2023)、『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房、2023)など。