団体戦、個人戦の双方を通じての活躍

 2人の活躍は、個人戦のペアに限らない。団体戦でもショートプログラム、フリー双方に出場、どちらでも参加チーム中1位となり、日本の銀メダル獲得に大きく貢献した。

 その団体戦を控えて、日本代表チームで決起集会が行われた。そのとき木原はこう呼びかけている。

「俺、たぶん史上最強のメンバーだと思っている。13年前、団体戦が始まったときは、日本がこういう立場になれるなんて思えなかった。でも、みんなが積み重ねてきて、いま挑戦できるチャンスを持っている。自分たちを信じて、ポジティブに行けば、最後には積み上げてきたものが絶対に出る。みんなでぶっちぎって行こう」

 団体戦は自らそれを実践したと言えるが、その言葉は木原だからこその重みがある。

 2014年のソチ五輪で団体戦が採用されたとき、日本はメダル争いに絡める位置にはいなかった。男女のシングル種目では勝負できても、ペアとアイスダンスが弱みとされていて、実際、そこで強豪国に後れをとっていた。

 木原はソチからオリンピックに出場している。そして団体戦を常に戦ってきて、日本がメダルに届かない要因を肌身に感じてきた。その責任を感じ、言葉にしたこともある。

 そういう苦しい時期も経て、ペアは木原と三浦が日本ではかつてなかった地位に押し上げ、北京オリンピックで団体戦初のメダルを獲得。さらに上を目指して臨んだのがミラノ・コルティナ大会だ。団体戦の歴史を知るからこそ、チームのメンバーにそうしたメッセージを発し、自らも強い思いで団体戦に臨んだ。それがショート、フリーを通じての好演技にもつながっている。

 団体戦で責任を果たすとともにチームを牽引して迎えたペアでも、新たな歴史を築いた。団体戦、個人戦の双方を通じて、木原そして三浦が残した功績は大きい。

 2019年夏、スケートをやめようとも考えていた木原と三浦がトライアウトで出会い、直感的に相性のよさを感じ取ってスタートした2人は、時間をかけて今日までたどり着いた。

 ミラノ・コルティナオリンピックでの活躍は、6年半に及ぶ真摯な取り組みの成果でもあり、その時間の重みをも感じる、輝かしい舞台だった。

 

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