文=松原孝臣 

2023年2月11日、四大陸選手権でフリースケーティングを演じる三浦璃来&木原龍一 写真=AP/アフロ

世界屈指のペア

 今、2人は世界屈指のペアとして存在している。国際大会で優勝を期待されるのが当たり前であるかのようでもある。そして2人はそれに応え、好成績を残してきた。

 でもそれは、当たり前のことではない。日本のペアの歴史を、そして2人、三浦璃来と木原龍一の足跡を考えれば——。

 いまや多くの人の関心を集め、そしてオリンピックや世界選手権などでも数々の好成績を残し続ける日本フィギュアスケート。でもそれはすべての種目であったわけではない。男女シングルに比べ、ペアは成績面で大きな差がついていた。例えばオリンピックでのメダルはむろん、上位進出も厳しい現状があった。

 成績が上がらないことからシングルほど関心を集めることもなかった。競技人口の少なさの要因の1つでもあった。

 そんなペアのありようを変えてきたのが三浦と木原だ。2019年の夏、ペアを結成したことを正式に発表した2人は、瞬く間に頭角を現す。同シーズンのNHK杯で5位と好成績を残すと、その翌シーズンの世界選手権でも10位となり、北京オリンピックの日本の出場枠を獲得した。

 2021-2022シーズンは、まさに記録ずくめの1年となった。グランプリシリーズで2位、3位となりグランプリファイナル進出を決め(コロナ禍で大会は中止)、北京オリンピックでは団体戦のショートプログラムで4位、フリーで2位、ペアではかつてない好成績をあげて日本の表彰台入りに大きな役割を果たした。個人戦では7位となったが、これは日本初の入賞であった。

 翌月の世界選手権でも史上最高の銀メダルを獲得。世界有数のペアに昇りつめたのである。

 その勢いは今シーズンも止まらない。グランプリシリーズのスケートカナダで日本ペア初の優勝を飾るとNHK杯、そしてグランプリファイナルでもやはり日本ペア初となる優勝を飾った。

 そして今年2月の四大陸選手権でも優勝。日本のペアが同選手権で表彰台に登るのは初めてのこと、しかもISUチャンピオンシップ(世界選手権、世界ジュニア選手権、欧州選手権、四大陸選手権)で優勝するのも日本ペアとして史上初であった。

 大会中の記者会見で木原はこう話していた。

「ペアを結成したシーズンに四大陸選手権に出場して8位だったとき、『いつか記者会見に出られるような選手になりたいね』とお互いに話し合っていたんです。だから、今回、こうして実現できたことをうれしく思っています」

 いつか、を実現するために2人は懸命に取り組んできた。根底にはペアに打ち込んできてのさまざまな思いもあっただろう。