「ペアをやりたい」と思ってくれるように
木原は2014年ソチ、2018年平昌とそれぞれ異なるパートナーとオリンピックに出場するなどキャリアを重ねてきた。それだけにペアの地位、向けられる視線を肌身に感じてきた。やがて自身に限界を覚え、退くことも考えていたときに出会ったのが三浦だった。
三浦もまた、前のパートナーとの関係を解消して模索していたときだった。ペアは相手がいなければできない。みつからなければそれだけ競技から離れることになるから、必死に相手を探していた。自身のことに加え、ペアの置かれている状況もむろん感じていただろう。
そんな2人が出会い、そして相性も驚くほど合っていた。
「合わせるんじゃなく合っている」、三浦はそう表現したことがある。それが短期間で日本ペアの歴史を塗り替えるほどに進化した最大の要因だ。
まもなく世界選手権を迎えようとしている。今シーズン、全勝で来た2人は優勝候補として臨むことになる。
現在の力関係から考えれば、1位を競うであろう相手はアレクサ・クニエリム・ブランドン・フレイジャー(アメリカ)になる。2人は昨シーズンの世界選手権金メダリストであり、今シーズンのグランプリファイナルでは三浦・木原が優勝したものの、彼らとの差は1点強の僅差だった。ミスの許されない拮抗した勝負も予想される。
それでも2人が目指すものに揺るぎはない。
「日本人ペアとしてISUの大会で初優勝できたのはうれしいですし、2人で頑張ってきたことが、こうして結果として表れ始めたんだと思います。そして僕らを見た日本の若い人たちが、ペアをやりたい、と思ってくれるだろうから、まだまだ頑張らなければいけないと思います」(木原)
自分たちの未来のために、日本ペアのこれからのために。
2人は新たな歴史を築くために、大舞台に挑む。