文=松原孝臣 

2022年12月25日、全日本選手権でフリースケーティングを演じる山本草太 写真=西村尚己/アフロスポーツ

初めての世界選手権

 ここまで来る時間は、どれほど長かっただろうか。

 山本草太にとって、さいたまスーパーアリーナで行われる世界選手権は初めて出場する舞台だ。

 そのキャリアにあった大きな困難とそこから立ち上がって今日に至る過程は、フィギュアスケートのファンの間では広く知られている。

 今年1月に23歳の誕生日を迎えた山本は、フィギュアスケートの世界では早くから注目を集めてきた。

 中学3年生であった2014-2015シーズンにはジュニアグランプリファイナルで銀メダルを獲得し、世界ジュニア選手権でも銅メダルと表彰台に登った。

 長い手足と伸びやかなスケーティング、そしてジャンプにも秀でたところを思わせ、その将来に期待が集まった。「2018年の平昌オリンピックの代表も狙える」と評されることがあるほどだった。

 高校1年生になった翌シーズンには国際大会で4回転トウループを成功させる。ジュニアグランプリファイナルに出場すると2年連続の表彰台となる銅メダルを獲得。全日本選手権でもシニアの選手たちの間で、前年に続き6位と上位の一角を占めた。

 だがシーズン終盤にアクシデントが襲った。2016年3月、トリプルアクセルの練習で右足首を骨折。世界ジュニア選手権を欠場せざるを得なくなった。

 怪我が癒えて氷上に復帰したものの、7月、10月と2度にわたり右足内側のくるぶしを疲労骨折。3度手術を受けるなど長期休養をよぎなくされ、グランプリシリーズ出場も決まっていた2016-2017シーズンは丸々欠場。

 復帰したのは1シーズンを置いたあとの2017年9月の中部選手権。ジャンプはすべて1回転という構成であった。

 そこから少しずつ、本来の演技へと近づけていった。3回転ジャンプを取り戻していくと、その中でジャンプの難易度をあげ、さらに4回転ジャンプをプログラムに織り込んでいった。

 それでも、願っている演技ができないことにもどかしさを覚えることがあった。

 2020年、全日本選手権を9位で終えたあと、山本はこう語った。

「スケート年齢で言うと、後半というか折り返しに入ってきている中で、まだこのような演技しかできないんだなと思うと、まだ成長できるかなという気持ちと、この先あるのかな、と」

 進んでいるように見えても立ち止まる瞬間があると、自身の可能性について葛藤した。

 でも、あきらめなかった。