織田信長と市との関係、史料が語る“距離感”

『豊臣兄弟!』では、信長の妹・市を宮﨑あおいが好演。何かと兄を気遣い、信長もまた、市の前では家臣たちには決して見せない素顔を見せて、時には本音をこぼす。

 そんな仲むつまじい兄と妹の関係に、意外に思った歴史ファンが多かったはず。というのも、信長は天文3(1534)年に生まれ、一方の市は天文16~19年頃に生まれたとされており、15歳ほどの年の差があることになる。また、信長と弟の信勝や信兼らは同じ母を持つが、市は出自が不明で、母は信長と異なるとされている。

 年の差がある異母きょうだいとなると、その関係性は極めて希薄だ。織田家を継ぐ嫡男の信長と、それほど親密な関係だったとは考えにくい。それだけに『豊臣兄弟!』のように、信長に寄り添い、いつも心配する市の姿には新鮮味を感じる。

 しかし、ドラマでの信長と市も、いつまでもほっこりとしていられないだろう。これから信長は市を、浅井家3代目にあたる浅井長政のもとに嫁がせることになるからだ。

 北近江を領地とした浅井家は、その領土は小さいものの、本州の最もくびれたところに位置しており、交通の要衝だった。信長は勢力を拡大するには、この地を押さえておく必要があると考えたらしい。市を長政の正妻とし、同盟も結んでいる。典型的な「政略結婚」である。

 ところが、信長が朝倉勢を攻めようとすると、長政は裏切って朝倉家のほうに加勢。挟み撃ちにして織田勢を滅ぼそうとした。

 信長の命をも奪いかねないピンチに、はたして市は動くのだろうか。自身の夫と兄が対立するという難しい状況である。『豊臣兄弟!』では信長との関係が良好だけに、市がどんな決断を下すのかは、気になるところだ。

 そして「本能寺の変」で信長が討たれると、市の運命は一転する。未亡人となった市は柴田勝家と再婚することになるが、一説には秀吉も市に興味を持ったといわれている。『豊臣兄弟!』ならば、秀長が「兄者にはお寧々様いるじゃろう!」と止めるも、秀吉が暴走してアプローチする……そんな場面が見られそうだ。

 秀吉と勝家がますます対立するきっかけとして、市の存在が描かれることもあり得るだろう。その後も、運命に翻弄される市の動向には要注目である。