その理由は(1)不動産危機に伴う負債問題の解消には長い年月がかかり、その間、中国は低成長を余儀なくされる、(2)多くの国民が富の大部分を住宅で保有しているため、価格の下落は逆資産効果を生み、消費を冷え込ませる――からだ。

他国より米国の内部要因がドルの地位を揺るがす

 ロゴフ氏は他国より米国の内部要因がドルの地位を揺るがすと警告する。トランプ政権の圧力でFRBが恣意的に金融政策を行えばドルへの信頼が失墜する。米国の債務は他の先進国すべての合計を上回る規模に達しており、低金利時代が終わった今、深刻なリスクになっている。

 ドルの支配力は緩やかに衰退しているが、それに代わる通貨は存在しない。しかし米国が制裁や関税を乱用し、FRBの独立性など制度の透明性を失えば、世界は金や不動産などの実物資産、仮想通貨、二国間決済といった並行システムに加速的に移行していく恐れがあるとロゴフ氏は危ぶむ。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。