米国が関与強めるグリーンランド、ウクライナ、南鳥島海域の共通点ーー豊富な資源
――今回のNDSの最大の特徴は優先順位を「中国」から「米本土および西半球(パナマ運河やグリーンランド)」へ移したことです。米国の限られた軍事資源を、遠く離れた第1列島線の防衛より直接的な米国の国益(国境、通商路)に集中させるというハードな現実主義への転換が持つ意味をどう見ておられますか。
香田 これは、2001年の米中枢同時テロ(9・11)までの伝統的な「外征軍による国防」つまり、国内で戦わず銃後の国民の生活の繁栄と安定および外地での侵略の排除を成し遂げる戦略の隙と盲点をイスラムテロリストに突かれ、いったん、米国内という懐に入られた敵に対する防御力が皆無であった現実への鮮烈な教訓に端を発しています。
その延長上に、これまで米国外交が「ほぼ」何もしてこなかった中南米も視野に入れた、トランプ「防衛圏」の確立が西半球重視であると言えます。ただ、戦後80年間の無策の負のツケの蓄積は大きく、単にベネズエラ攻撃や1990年のパナマ侵攻程度で、事態の回復とトランプ防衛圏の確立が困難なことは米国民もよく知っていると思います。
同時に、トランプ政権のやり方(戦術)は国際法などを完全に無視した強引かつ傲慢なもので同意はできませんが、国家目標と戦略目標の設定は正当かつ健全と考えます。時間はかかろうとも、国際社会になじむ戦術の遂行が米国には求められます。
もう一つが資源確保の観点です。2期目のトランプ大統領をよく観察すると、対中資源ギャップへの不安とそれに起因する切迫感が強くうかがわれます。これは、究極的に米中経済協調後に必然的に生起する中国とのG1(世界の覇権)を巡る戦いに、何もしなければ経済面で後れを取る公算が強い米国の欠点の是正というトランプ大統領の信念です。
このため、トランプ大統領はリソース・リッチなグリーンランド、ウクライナ、コンゴなどの確保を、なりふり構わず進めているとみるべきです。その延長に、先日のトランプ―高市会談での南鳥島海域の海底資源開発合意なども含まれます。
この観点から米国とトランプ政権は、地理的位置にかかわらず対中優位と究極の勝利のための資源確保と物流維持のための軍事態勢と体制をとることは必定であることから、単純な第1列島線からの撤退や配備兵力の軽減に直結しない公算が極めて高いと言えます。
また、それが故に、同盟国の軍事と防衛能力の向上を求めているのです。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。


