政府発表では「大したことではない」とでも言いたげな表現
政府側の「波風立てぬよう」という配慮は、森林・農地(農水省)でも同じ傾向があるようです。
森林は外資買収面積の公表が2010年から続けられていますが、過去15回分(2010~24年)の表題(メインタイトル)は、「外国資本による森林取得に関する調査の結果について」でした。農地も過去6回分(2019~24年)の表題は「外国法人等による農地取得に関する調査の結果について」でした。淡々とニュートラルなタイトルにして、調査結果にバイアスがかからぬよう配慮をしていたと思います。
でも2025年は変わりました。
森林の表題は「令和6年に外国法人等により取得された森林は全国の私有林の0.003%*6」(2025.9)、農地の表題は「令和6年に外国法人等により取得された農地は全国の農地面積の0.004%*7」(同)でした。極めて少ない!との評価を押し出しました。
米国内の外資買収比率とも比べ、「大丈夫です。米国に比べたら大したことありません」といいたげですが、知人たちの感想はこうでした。
「発表資料、数値を小さく見せる工夫をしてますね」
「いかに小さめに見せたいか見え見えですね!!」
「以前、新潟にいましたが、妙高、斑尾、野沢温泉の信越県境のスキー場など、外国人の土地買収はすさまじかったです。農水省の統計は、実際の体感と全く違います。こんなに少ないわけ無いです」
「割合の表記は実数と捕捉率を、実数の表記は母数と割合を併記すべし――の原則が忘れられています」
現場感覚と政府対応のズレは、以上のとおりです。
その乖離をなくそうとはじまっている自発的な住民の動きが、上記3カ所の――【笠佐島の事例】広く国民に向けた離島の募金運動、【当別町の事例】住民による切実な再エネ反対運動、【京極町の事例】弱小自治体による水源地の買い戻し運動です。
孤島に残る豊かな自然と小さな家=笠佐島(筆者撮影)
足もとをすくわれかねないこれらの深刻な土地問題に対するささやかな抵抗に、一般のメディアもしっかり目を向けてくれるよう願わずにはいられません。
高市政権への期待は大きいので、問題の本筋から逸(そ)れることなく取り組んでほしいと思います。
*6 農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/press/keiei/seisaku/250916.html
*7 林野庁 https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/keikaku/250916.html
【平野秀樹】国土資源総研所長
九州大学農学部卒業後、農水省入省。環境省環境影響評価課長、農水省中部森林管理局長を歴任。東京財団上席研究員、大阪大学医学部講師、青森大学薬学部教授、姫路大学農畜産研究所長も務めた。博士(農学)。2024年瑞宝中綬章受賞。「聞き書き甲子園(高校生による民俗伝承)」「森林セラピー®」の創設にかかわる。現在、兵庫ムクナ豆生産組合理事長、森林セラピーソサエティ副理事長を兼務。
著書:『サイレント国土買収』(角川新書)、『日本はすでに侵略されている』(新潮新書)、『日本、買います』(新潮社)、『森の巨人たち・巨木百選』(講談社)、『森林理想郷を求めて』(中公新書)
共著:『宮本常一』(河出書房新社)、『領土消失』(角川新書)、『奪われる日本の森』(新潮文庫)、『森林セラピー』(朝日新聞出版)、『森林医学』『森林医学Ⅱ』(朝倉書店)など多数。




