尾張統一の仕上げとなった「岩倉城の戦い」

 村が襲われるシーンでは残酷な描写も多く、SNSでも話題になった。

 なかには、「信長の統治が行き届いていないことにならないか?」という疑問の声もあったが、ただ単に盗賊が大暴れしたわけではなさそうだ。

 今回の放送から、宮﨑あおいが演じる信長の妹・市が登場。市は織田信秀の五女で、信長とは13歳ほどの年の差があったとされている。市が信長にこんな報告をするシーンがあった。

「今川の息のかかった野武士の一党が、我が領内にまで足を踏み入れ、狼藉を繰り返していると耳にします。誰かが手引きしなければなし得ぬこと」

 秀長に降りかかった惨劇は、今川が仕掛けたものらしい。ここで少し背景を説明しておいたほうが分かりやすいだろう。

 もともと尾張国を治めていたのは守護の斯波氏(しばし)だったが、やがて求心力を失い、守護代・織田家が台頭。上四郡を織田伊勢守家(おだいせのかみけ)が、下四郡を織田大和守家(おだやまとのかみけ)が治める体制となる。

 やがて織田大和守家に仕える代官の織田弾正忠家(おだだんじょうのじょうけ)から誕生した信長が18歳で家督を継ぐと、弘治元(1555)年に清洲城を占拠。大和守家を滅ぼしている。

 尾張統一の仕上げとして信長が攻撃したのが、岩倉城を居城とする織田伊勢守家だ。永禄2(1559)年に岩倉城を包囲し、数カ月に及ぶ籠城戦を展開。城主の織田信賢(のぶかた)を降伏させている。

 今回の放送では、小栗旬演じる信長が、降伏を伝えに来た使者を斬るように命じて、さらにこう言い放つ場面があった。

「岩倉城下に火を放ち、町を全て焼き払え。それが返答じゃ。城を丸裸にし、あるだけの鉄砲と火矢を用いて、連日連夜攻め立てよ。一日たりとも休むことは許さぬ」

 実際の「岩倉城の戦い」でも城下に火を放ち、鉄砲攻めにしたようだ。

〈二、三カ月近々と陣を据えて、火矢・鉄砲を撃ち込み、さまざまに手を替えて攻めた。岩倉方は守りきれないと判断して、城を明け渡し、将兵は散り散りに退去した〉(『現代語訳 信長公記』より)

 だが、ドラマでは、市が信長にこんなことを言っていることに注目したい。

「伊勢守は我らに降伏したと見せかけて、裏で今川と通じ、いずれ尾張を手に入れようともくろんでいるのでは……」

 信長が「考えすぎだ」と言うと、市は「ええ、考えすぎです。兄上と同じで」と応じている。暴君として描かれがちな信長だが、ただ激情に駆られて降伏を示す相手方の使者を斬ったわけではないようだ。さらに、信長はこんなセリフを続けている。

「肝心なのはただ勝つことだけではなく、勝った後をどう治めるかじゃ。誰もあらがえぬ、揺るがぬ力を示さねばならぬ」

 信長の「考えすぎ」は、これからどんなふうに発動するのだろうか。

 そのようにして、ほぼ尾張を統一した信長を警戒したのが、駿河と遠江を本拠にする今川義元である。『豊臣兄弟!』では、大鶴義丹が演じる。

「桶狭間の戦い」で敗れたことで、愚かな大将として描かれがちな義元だが、実際は三河にまで進出し3カ国を支配。「海道一の弓取り」とも称された。今回のドラマでは、現時点でも今川方の深謀遠慮が描かれているので、策士としての義元が見られそうで楽しみである。

 次回放送は「決戦前夜」。故郷の中村をあとにした秀長、秀吉、直の3人が信長の城下町・清須にたどり着く。

【参考文献】
『多聞院日記索引』(杉山博編、角川書店)
『史料大成多聞院日記〈全5巻〉』(竹内理三編、臨川書店)
『現代語訳 信長公記』(太田牛一著、中川太古訳、新人物文庫)
『図説 豊臣秀長 秀吉政権を支えた天下の柱石』(河内将芳著、戎光祥出版)
『豊臣秀長 シリーズ・織豊大名の研究』(柴裕之編、戎光祥出版)
『豊臣秀長のすべて』(新人物往来社編、新人物往来社)
『戦国最高のNo.2 豊臣秀長の人生と絆』(真山知幸著、日本能率協会マネジメントセンター)