作戦の容易さと経済的な利益

 それにしても、なぜグリーンランドなのか。

 第1の理由は、奪取が容易だからだ。グリーンランドならベネズエラでの「絶対的決意作戦」の時と同様に、シチュエーションルーム(状況伝達室、トランプはフロリダの邸宅マール・ア・ラーゴにも似たような部屋をこしらえた)のパフォーマンス的な空間からグリーンランドを併合できる。

 作戦には1、2時間しかかからないだろうし、米国側に犠牲者は出ないだろう。そうすればバラク・オバマの真似をし続けることができる。

 トランプは、2011年のウサマ・ビンラディン殺害をオバマがモニターで見ている象徴的な写真をとてもうらやましく思っているのだ。

 デンマーク人は決して平和主義者ではないものの、超大国に抵抗するのは自殺行為だろう。

 第2に、グリーンランドを自分の陣営に引き入れると大きな儲けになる。トランプのリバタリアン(自由至上主義者)の友人たちは、かなり前からこの土地に目をつけていた。

 未開発の土地で暗号資産を使った「ネットワーク国家」を設立したいと思っているピーター・ティールは、それと同じ目標に掲げてグリーンランドをその候補地にしているスタートアップ企業のプラクシスに投資している。

 トランプ政権の駐デンマーク米国大使ケン・ハウリーは、ティールやイーロン・マスクとともにペイパルを立ち上げた間柄だ。

 シリコンバレーには、ネットワークを用いた何らかの企てに投資している億万長者がたくさんいる。そして彼らの多くが、グリーンランドを企ての舞台の最有力候補に挙げている。

 火星とは異なり、グリーンランドを占領することは不可能ではない。

グリーランドを取得すればNATOが瓦解

 グリーンランドを手に入れることはリバタリアンを喜ばせるだけでなく、MAGA(米国を再び偉大に)運動のイデオローグたちにも受ける。何しろ、北大西洋条約機構(NATO)を一気に破壊することになるからだ。

 デンマークは、NATO加盟国1国への攻撃はNATO全体への攻撃と見なすと定めた北大西洋条約第5条の発動を求めることができる。NATOを率いているのは当の米国であるため、条約は無効になる。

 どの同盟国もデンマークの防衛に駆けつけない。仮にデンマークが既成事実を受け入れたとしても、結果は同じことになる。

 いずれにせよ、トランプの説明は法律ではなく、地理に基づいてなされるだろう。グリーンランドのごく一部地域は東半球に入っているものの、大半は西半球にある。

 ベネズエラの展開次第では、トランプの関心が北極圏ではなくカリブ海沿岸にとどまることもあり得る。

 コカを栽培するコロンビアのプランテーションや、メキシコのフェンタニル工場を攻撃したとしても、驚くに値しない。同様に、キューバも狙われていないかどうか気をつけるべきだ。

 トランプはカナダも米国の51番目の州にしたいと思っているが、カナダの首相が昨年、ジャスティン・トルドーからマーク・カーニーに交代して以降、その野望をほとんど口にしなくなっている。

 トランプが公にしている構想のうち、カナダの優先順位は最も低い。その一方で、グリーンランドはいつ星条旗が掲げられる事態になってもおかしくない。