2023年のWBCで優勝して、喜びを爆発させる大谷翔平選手(中央)ら日本代表のメンバーたち=アメリカ・マイアミ(写真:共同通信社)
スポーツは政治から自由であるべきだ――。この言葉は、国際大会のたびに決まり文句のように繰り返されてきた。
しかしながら2026年という時代を前に、その理念はかつてないほど現実から乖離しつつある。米国によるベネズエラへの軍事介入、ニコラス・マドゥロ大統領の拘束という衝撃的な出来事は単なる一国の政変にとどまらず、3月に開幕する第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、さらには今夏に控える2026年FIFAワールドカップ(W杯)にまで、直接的な影を落とし始めている。
単なる「外国人選手」ではない、MLBのベネズエラ出身選手
事態が動いたのは、現地時間の1月3日未明だった。米軍はベネズエラの首都カラカスを含む複数地域に対し大規模な軍事行動を実施し、その過程でニコラス・マドゥロ大統領と妻を拘束、国外へ連行したと発表。マドゥロ氏は麻薬テロリズム共謀などの罪で起訴された裁判の被告人としてニューヨーク連邦地裁に出廷し、果たして他国の国家元首を米国の国内法に基づいて裁く権限があるのかどうかも含め、その刑事裁判の審理が今も続いている。
いずれにせよ長年にわたり続いてきたベネズエラの反米体制は事実上、軍事力によって強制的に終焉を迎えた形となった。
当初、国際社会の一部では「民主化への道が開かれた」との評価も聞かれた。暫定政権の樹立、国際社会への復帰、経済制裁の段階的解除――。そうした青写真が描かれれば、3月開催のWBCにベネズエラ代表が参加すること自体はむしろ新体制の象徴となり得る。これまでも野球が事実上の国技であり、社会結束の象徴として機能してきたベネズエラにとって、WBCほど分かりやすい「国の再出発」を示す舞台は存在しない。
だが、その期待は急速にしぼみ始めた。マドゥロ旧体制を支持する勢力は国内に依然として強く残り、西側諸国と対立するロシアや中国は米国の行動を「露骨な内政干渉」「主権侵害」と厳しく非難。一部の欧州諸国からも懸念の声が上がり、米国主導の「民主化」は、次第に「強行介入」「国家暴走」として語られ始めている。