企業風土が招いたニデック「不正経理疑惑」
ニデックではイタリアの子会社で関税不払い事案が発覚したことで、25年6月26日、類似案件を調査すると発表。同時に25年3月期の有価証券報告書(有報)の提出を9月26日に延期することを決めた。
9月3日には、子会社であるニデックテクノモーター傘下の中国企業で、日本円で約2億円の購買一時金が不適切に処理された可能性があると発表。その調査過程で資産性にリスクのある資産に関して経営陣が関与、認識の下で評価減の時期を恣意的に決めていた可能性があることも発覚した。これを受けて、会社からは独立した第三者委員会による調査が進められることになった。
さらに有報の提出期限であった9月26日には、ニデック担当のPwCジャパン有限責任監査法人が25年3月期の有報の連結財務諸表に関して「意見不表明」にすると発表。これは監査法人が有報の適正さを判断できない場合などの対応であり、決算の内容にお墨付きを与えないことを意味する。
これを受けて、東京証券取引所を傘下に置く日本取引所グループ(JPX)が10月28日、ニデック株を「特別注意銘柄」に指定した。これは有報に虚偽を記載した場合などに取られる措置で、かつて粉飾決算が起きた東芝やオリンパスも旧制度の「特設注意市場銘柄」に指定されている。日本経済新聞社はニデック株を日経平均から外した。
また、第三者委員会の調査とは別にニデックは10月30日付で岸田社長を委員長とする「ニデック再生委員会」を発足させた。同委員会でJPXに提出する内部統制などの改善計画を策定し、1月中に提出する計画だ。JPX側はこれを受けて、上場維持か廃止かを審査することになる。
こうした「不正経理疑惑」に関してニデックの経営陣が初めて公式の場で説明したのは11月14日だった。26年3月期中間決算を発表する場の冒頭で、岸田社長が関係者に陳謝するとともに、こう語った。
「組織風土そのものを改革する。短期的な収益を重視し過ぎるきらいがあった。そこから改めないとよくならないという問題意識を持っている」
ニデックの組織風土は、創業者である永守氏が構築してきた。「組織風土そのものを改革する」ということは、「永守流経営」からの脱却を意味すると筆者は受け止めた。
「永守流経営」が重視することの一つに「すぐやる、出来るまでやる、必ずやる」という考え方がある。これに対して岸田社長は「『必ず正しくやる』を付加していく」とも説明した。この発言からは、永守氏の経営手法が今回の「不正経理疑惑」につながったとも受け止めることができる。
こうした疑惑が起こる背景について、筆者は複数の幹部や元幹部、元役員に話を聞くことができたが、そこからは岸田社長が指摘するように、やはり「企業風土」の問題が根底にあることがうかがわれた。いくつかの証言を簡略にまとめて紹介すると、次のようになる。