「米国の法律を犯した者は他国の元首であっても米国内法で裁く」

 マドゥロ大統領を殺害(斬首)せず「拘束し、米国の法廷で裁く」という手法を選んだ点は重要だ。トランプ氏は「気に入らない指導者を消す」のではなく「米国の法律を犯した者は、たとえ他国の国家元首であっても米国内法で裁く」という国際警察力を世界に見せつけた。

 作戦の意義は「米国にとって安全な政権移行が確認できるまで、事実上の管理下に置く」という実務的な管理戦略にある。ネオコンの「民主主義の輸出」ではなく「米国の安全保障のための安定化」へ米外交のパラダイムはシフトした。

 トランプ氏は「パナマからカナダ、そしてグリーンランドに至るまで西半球の強固な勢力圏」の構築をたびたび口にしてきた。今回の介入に対し、米紙ニューヨーク・タイムズの著名コラムニスト、トーマス・フリードマン氏は1月3日付コラムでこう警鐘を鳴らした。

「イラク侵攻の第一のルールは『陶器店のルール』だった。われわれがイラクを壊せば、国家再建に対して責任を負う。いま同じ問いを投げかけずにはいられない。トランプ政権はベネズエラの指導体制を壊したばかりだ。トランプ氏はそこで次に起こることへの責任を所有している」

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。