そして2018年、5年ぶりに二刀流の大谷翔平がエンゼルスに移籍。マイナー契約ながらこの年新人王をとる活躍をすると、再びMLB側の日本人打者への注目度が上がり、2020年には筒香嘉智、秋山翔吾と2人のスター選手が海を渡る。

 しかし、筒香、秋山ともに期待を大きく下回る。

2022年3月、カブスの入団記者会見で、笑顔で報道陣の質問に答える鈴木誠也(写真:共同通信社)

 2022年に移籍した鈴木誠也は、今季30本塁打100打点を記録するなど、まずまずの活躍。

 しかし23年に移籍した吉田正尚は安打こそ出るものの長打力に乏しく、今のところ期待を下回っている。

2022年12月、レッドソックスの入団記者会見後に記念撮影する吉田正尚外野手(右から2人目)。その左はハイエム・ブルーム編成本部長、右は代理人のスコット・ボラス氏(写真:共同通信社)

 令和唯一の三冠王でありNPB最強打者の一人と言ってよい村上宗隆は、5年以上の契約で150億円以上の契約になるものと思われたが、意外に小型の契約になった。これは大谷翔平以降に移籍した打者で、期待に応えたと言えるのは辛うじて鈴木誠也だけで「日本人選手下げ」モードに入ったからではないか?

 イチロー以降に移籍した日本人打者がことごとく不振に終わった2010年ころにはMLBでは「NPBの選手がみんなイチローみたいなわけじゃない、彼は特別だったのだ」という声が聞こえたが、現在のMLBの評価も端的に言えば「大谷だけは特別だ」ということになっているようだ。

 さらに言えば、今のMLBは打つだけでなく、走攻守の総合面を重視する。MLBではこれらの総合指標であるWAR(Wins Above Replacement)を重視する。

人工芝に慣れた日本人内野手が手を焼くMLBの球場

 WARはBaseball Reference(rWAR)、Fangraphs(fWAR)という2つのデータサイトが発表しているが、現役打者3人の評価は以下のようになっている。カッコ内はリーグ順位。

 なお、大谷翔平は投手のWARは含まない。規定打席未達の吉田の順位は不明。

大谷翔平 ドジャース(ナ・リーグ) DH
 rWAR 6.6(2位) fWAR 7.5(1位)

鈴木誠也 カブス(ナ・リーグ) DH
 rWAR 2.6(48位) fWAR 2.6(54位)

吉田正尚 レッドソックス(ア・リーグ) DH
 rWAR 0.2 fWAR -0.1

 3人ともにDHであり、WARの要素のうち「守備成績」は加算されない。

 それでも大谷がリーグトップの成績なのは、彼の打撃成績がア・リーグのアーロン・ジャッジに匹敵する突出度だからだ。

 鈴木誠也は、800人ほどいるナ・リーグの打者の中では上位の成績ではあるが、吉田のWARは極めて低い。

 WARは、リーグの平均的な選手に対する「傑出度」の数値だ。平均的な選手のWARは0.0なので、アメリカのデータサイトの吉田の評価は「並みか、それ以下の選手」ということになる。

 傑出した打撃成績を挙げない限り、DHの選手の評価は低くなるということだ。