北朝鮮は、航続距離の長い航空戦力を持っていませんし、投射のできる海軍戦力も育成を始めたばかりです。東シナ海で、日米の水上戦力を牽制する程度の動きしかできないではずです。

 一方、台湾側につく日米は、中国側が着上陸戦力の防護に注力しなければならないこともあり、台湾本島東側では行動の自由度が高く、長射程兵器による海空での阻止戦闘が可能です。また、台湾本島における中国軍着上陸戦力の撃破においても、台湾を効果的に支援できます。

 北朝鮮およびロシアが中国側についており、東アジア大戦へのエスカレーションを警戒しなければならないため、日米は台湾方面へ全戦力を集中させることはできませんが、それでも十分な戦力を台湾戦域に指向できます。

 こうなると、中国は強引に台湾を押しつぶすことはできません。洋上で撃破される着上陸戦力も出る上、日米が台湾の補給を支えるため陸上での戦闘でも多大な損害を被ることとなり、侵攻作戦は、最終的に失敗に終わるでしょう。

評価結果~台湾側にアメリカと日本がつくと?

 上記のように、マトリクス図の各枠は、それぞれに分析(あるいはシミュレーション)されます。その概略だけを書き込んだものがマトリクス図ということです。

 既に述べたように、マトリクス図を使って分析する場合のメリットは、各項の比較と全体傾向の把握にあります。

 そこで、最初の論題に立ち返り、このマトリクス図を見ながら、さまざまな事態、様相があり得る“台湾有事”において、何が起こり、有事がどう展開するのか考えてみます。

 このマトリクス図を、縦の列で見ると、やはり台湾単独で事態に対処した場合は、列の色は赤が強く、どのような烈度の事態であれ、中国に作戦目的を達成されてしまう可能性が高いことが、分かるかと思います。

 故に、今回の立憲民主党岡田議員の質問に端を発した台湾有事での存立危機事態言及騒動においても、中国はヒステリックなまでに非難し、日本のコミットを阻止しようと動いています。

 また、横の列で見ると、事態の烈度が高くなるほど、つまり、図の下に行けば行くほど色は黄色に近づき、中国の作戦目的達成が難しくなり、中国側の損害も大きなものになることが分かります。