ウクライナにあるファイアポイントの秘密工場で検査されるフラミンゴ巡航ミサイル(2025年8月18日、写真:AP/アフロ)
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(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 現在、ウクライナ情勢の焦点は、残念ながらトランプ大統領によるウクライナへの事実上の降伏強要となってしまっています。トランプ大統領の対ロシア観、戦況認識、安全保障観は決定的に歪んでいるため、このようなことになっていますが、その背景には、ウクライナ軍だけでなく、ロシア軍にも軍事的に前線の敵軍を撃破できる能力がないことも関係しています。

 ただし、ウクライナ軍の戦略は、前線のロシア軍を打ち破るのではなく、ロシアという国を主にその経済面から破壊し、前線から自主的に後退させるというものに移っています。その主役はFP-1のような自爆ドローンやネプチューンなどの巡航ミサイルであり、石油精製設備や石油製品の輸出関連設備を中心に標的としています。

 この戦略が実際に実を結ぶか否かは、トランプ大統領の動きもあり、分かりません。そんな中、先週、この戦略の今後を見通す上で、重要な新情報がありました。

 それは、今後のロシア深部攻撃の主力となるとみられているFP-5、フラミンゴ巡航ミサイルの性能について、従来予想を大きく上回る可能性が示されたことです。これは、フラミンゴやFP-1のメーカーであるウクライナの軍事企業「ファイアポイント(FirePoint)」のプレスカンファレンスで示されました。

 以下では、このカンファレンスにおいて、質問に答える形で示されたフラミンゴの防空網突破能力について、同社とウクライナ軍が今後乗り越えるべきハードルとともに解説します。