焦点になるのは、海峡内にある澎湖諸島です。澎湖諸島は、台湾海峡南部の台湾本島寄りにありますが、台湾本島から40キロメートル程離れています。十分とはいえない程度ではありますが、台湾本島からHIMAD(中長射程防空火器)によるエアカバーもかかる位置です。

 台湾側が、離島である澎湖諸島に大きな兵力を貼り付けておくことは困難です。しかし、中国がその少数を打ち破る程度の兵力を送り込み、それを維持するためには、台湾海峡で多数の船舶や航空機を損耗する結果となります。政治的な工作を併用し、早期に台湾世論を厭戦機運に染めない限り、侵攻は断念せざるを得なくなるでしょう。

【2】台湾本島侵攻──中国+北朝鮮+ロシア vs 台湾+米+日

 海上封鎖に加え、台湾本島への着上陸が行われる烈度の高い事態です。

 参加プレイヤーは、中国側には北朝鮮とロシアがつき、台湾側にはアメリカと日本がつく東アジア大戦一歩手前の状態。

 それでも大戦ではなく一歩手前なのは、ここで想定している事態は、中国側が多数の国を巻き込んだ大戦にエスカレーションすることを懸念し、攻撃を台湾とその周辺海空域に限定し、日本や在日米軍基地への攻撃を控えたパターンだからです。台湾側も攻撃対象を限定しています。台湾海峡西側の大陸に存在し、台湾攻撃の策源地となっている港湾や空港に限定したものを想定しています。

 このケースでは、ある程度の期間をかけて台湾世論を屈服させようとする海上封鎖のみの場合と異なり、中国側の思惑は、短期間で台湾側の阻止能力を削り、多数の艦船を繰り出して台湾の抵抗能力を破壊することにあります。

 中国側には北朝鮮とロシアがついていますが、戦域が台湾周辺に限られた場合、両国の戦力投射能力は高くありません。

 ロシアは、ウクライナへの侵略後も、太平洋艦隊を無傷のまま保持し、相応の投射能力を持っていましたが、ウクライナへの侵略により人的資源は激しく損耗しました。艦隊を振り向けた場合、極東の戦力があまりにも希薄となるため、台湾海峡に戦力を向けるとしても、戦略爆撃機であるTu-95など一部にとどまるでしょう。