「自衛隊は中国軍に勝てない」の誤謬
“台湾”有事と呼ばれるように、そもそも台湾有事の主体は台湾(と何より中国)です。もし、たとえ日本が存立危機事態を認定し、台湾有事に関与しようとしても、台湾が降伏を選べば日本には何もできません。
それに、日本の安保政策は日米同盟を基軸にしており、台湾有事にアメリカがコミットしない場合、日本単独でできることは極めて限られています。
つまり、そもそもの話として、「自衛隊 vs 中国軍」という図式が、根本的に誤っているのです。
これは、NATO加盟などの同盟戦略を採ることができなかったウクライナでさえ、アメリカや欧州各国、それに日本などを含めた支援を受けて戦っていることからも明らかです。軍事力の衝突は、スポーツのようにフェアな試合ではないのです。
それに、“台湾有事”がどのようなものになるかは、危機のエスカレーションにもよるものの、基本的に中国がどのような作戦を行うかによって全く違ったものになります。
具体的にいえば、大陸に極めて近い金門諸島、馬祖諸島だけの占領を目指すものから、台湾本島への着上陸、さらにはその支作戦として日本や在日米軍基地への攻撃を行うものまで様々です。
そして、それぞれの作戦は、軍事的な占領を企図するものもあれば、主に経済に圧迫を加え、台湾世論を降伏に傾けることを意図するものなどもあります。当然、その事態に応じて、自衛隊の関わり方も変わってきます。
戦いのルールが違うということです。単に「A vs B」といっても、それがボクシングの試合なのか、テニスの試合なのか分からないようなものです。