「ヤミ民泊」利用者は年間約110万人

 京都市では2018年、京都市の許可を得ずに市内右京区の木造民家に外国人観光客を民泊させていたとして、運営会社の社長ら3人が旅館業法違反で書類送検されました。京都府警の捜査によると、施設は看板も表札もない古い民家で、立件されるまでの2年余りの間に中国人客ら約250組が宿泊。京都市は無許可営業に対する警告を3度発しましたが、経営者が無視したことから警察に刑事告発していました。3人は最終的に罰金刑を受けています。

 これが事件化する前に京都市が推計したところ、無許可の民泊「ヤミ民泊」の宿泊者は年間で約110万人に達していたとされています。外国人観光客が大挙して京都を訪れ、既存のホテル・旅館では対応しきれない。そんな状況の中で、ヤミ民泊施設が急増し、そこへ外国人が流れていく構図です。

図表:フロントラインプレス作成

 警察による事件化には至らないものの、民泊施設を管理する自治体は違法業者への対応を強化しています。民泊施設の多い東京都新宿区は今年9月、区内で営業する12業者に業務停止命令を出しました。

 民泊事業者は2カ月に1回、自治体に対し、宿泊人数・日数、利用者の国籍などを定期的に報告しなければなりません。しかし、これら12業者は定期報告を怠ったうえ、改善命令にも従いませんでした。

 新宿区はその後も、11月に9業者に業務停止を命令。このうち悪質度の高かった4業者に対しては、この12月に民泊事業の「廃止命令」が出されました。4事業者は業務停止期間中にも外国人を宿泊させたり、報告義務違反を繰り返したりする悪質さ。今後も改善の見込みがないとして、東京都内では初めての廃止命令が言い渡されたのです。

 それにしても、国家戦略特区の目玉メニューでもあった「民泊」が、なぜこのような事態になったのでしょうか。