特区民泊、居室数で96%が大阪に集中

 日本政府が訪日旅行促進(ビジット・ジャパン)事業を始めたのは、2003年のことです。2007年には観光立国推進基本法が施行され、翌2008年には観光庁が発足しました。しかし、同年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災などの影響もあり、訪日外国人旅行者を増大する計画は目標通りに進みませんでした。
 
 転機となったのは、2012年に発足した第2次安倍政権です。安倍首相は財政出動、金融緩和、成長戦略を「3本の矢」とするアベノミクスに着手。成長戦略の柱に「観光立国推進」を掲げ、2013年には安倍首相が統括する「観光立国推進閣僚会議」を発足させました。そして外国人客を増やすための優遇策や施策を次々と実現させていきます。

 民泊関連では、2015年に「民泊特区」を創設。2018年には「民泊新法」が施行になり、民泊が加速しました。ちょうど、東京夏季五輪2020の開催が正式決定し、大阪・関西万博の正式立候補も決まったころ。「おもてなし」の心で外国人を迎え入れるという考えには、多くの日本国民も賛同したのです。

 民泊拡大施策のうち、民泊特区とは、国家戦略特区に指定された地域(東京都・大田区、千葉市、大阪府・大阪市、北九州市など)において、旅館業法の規制を緩和し、外国人旅行者向けの宿泊施設を柔軟に運営できるようにする施策です。正式名称は「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」。旅館業の許可なしで、2泊3日以上の施設を営業できるうえ、消防設備やフロント設置の要件も緩和されました。

 内閣府が2024年12月時点でまとめたデータによると、特区民泊の認定施設数は全国で合計5893施設、居室数は1万6271室、事業者は3367で、その圧倒的多数が大阪市に集中しています。施設数で数えると94%、居室数で96%。大阪・関西万博の地元として行政が施設増加の旗を振ったほか、屈指の観光地・京都に近いという地の利が作用したとみられます。

 もう1つの制度は、どういうものでしょうか。