東京都中央区のマンション「晴海フラッグ」。このマンションも違法民泊に悩まされている(写真:共同通信社)
(牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー)
金融緩和継続が招いた外国人の不動産爆買い
外国人による日本の不動産爆買いが止まらない。
インバウンド(訪日外国人)が増え始めたのは2013年に年間1000万人を超えたあたりからで、コロナ期の一時的な落ち込みを乗り越え、今年は4000万人を超えることが確実視されている。
初期の頃はインバウンドによる化粧品や薬品、炊飯器など電化製品の「爆買い」が話題になった。ところが昨今は、アジアを中心に所得水準が上がり、都内のタワマンなどを購入する外国人が急増。マンションの中では外国人所有者が全世帯の半分程度になっているものもあると聞く。
マンション爆買いになった原因が激しい円安である。
日本は2013年以降のアベノミクスと呼ばれた大規模金融緩和を行い、市場に大量のマネーを供給してきた。本来この政策は東京五輪が開催される2020年頃を目途に軌道修正されるものと考えられてきた。
ところが日銀は消費者物価が2%上がることをデフレ終焉の目標に置いてきたものの終始、利上げに対して慎重な姿勢を崩さず、ぐずぐずと決断を先延ばしにした。
ここで生じたのが全世界を震撼させたコロナ禍だった。世界中で大規模な補助金、産業を救うための支援金、金融緩和が行われ、大量のマネーがばらまかれた。
市場に流れたマネーは必ずしもすべてがコロナ対策にまわったのではなく、一部は投資マネーとして世界中で株式や不動産に対する投資資金にその姿を変えていった。
投資の過熱による世界的なインフレ傾向に危機感を覚えた欧米各国が利上げに舵を切った中、日本だけが利上げの決断を躊躇していた2022年以降、円ドル相場は大幅に円安方向に振れていく。
図表:為替相場と株価・マンション価格との相関(筆者作成)
図表は、円ドル相場および日経平均株価の各年末値と都内で分譲された新築マンション平均価格をコロナ前の2018年を100として指数化したものだ。
日銀の政策金利引き上げのタイミングが2024年7月までずれ込んだために円安が加速し、外国人マネーの株式や不動産への大量流入を後押しした形になったことが明確に読み取れる。
都内の新築マンション平均価格が2023年以降急伸したのは、こうした外国人マネーの存在を抜きにしては考えられないのだ。