住民同士の関係が希薄になった高齢マンションは要注意(写真:makoto.h/イメージマート)
(牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー)
隙が生まれるマンション管理
国土交通省「マンション総合調査」(令和5年度)によれば、全国のマンションストック戸数は700万戸を超え、マンション住まいは現代の代表的な住居形態になっていることがわかる。
一方で、初期に建設されたマンションで建物の老朽化、建替え問題が浮上している。同調査によれば、2023年末現在で、築40年以上のマンション戸数は136万9千戸に及び、今後さらにその戸数は、2033年に274万3千戸、2043年には463万8千戸に逓増(ていぞう)していくことが推計されている。
マンションの多くは鉄筋コンクリート造による堅牢な建物で、法定耐用年数は47年とされる。ちゃんとしたメンテナンスを施せば60年以上維持できる。ただ、住宅は上下水道などの配管や電気設備など多くの設備を具備するため、一定の時期での建物全体の建替えが必須となる。
だが、マンションの建替えは一向に進んでいない。国はマンション建替え円滑化法などを制定して建替えの推進を図っているが、同調査によれば2023年までに建替えが行われた件数は累計で297件、戸数にして2万4千戸。築40年以上のマンション戸数のわずか1.7%にすぎない。
原因として指摘されるのが、マンション住民の高齢化と管理組合の機能不全だ。マンション世帯主の年齢構成は60歳代以上で全体の53.6%を占め、建物が老朽化するにしたがって世帯主の年齢が上昇する傾向にある。
また管理組合の理事長や理事の選択にあたって成り手がいないという問題が、築年の古いマンションほど顕著になっている。建物の老朽化に伴って修繕や管理上のトラブルが多く発生してくるのにもかかわらず、対処する側である管理組合の理事会が高齢化や成り手の不足によって機能していないのだ。
区分所有者が高齢化して組合総会に出席しない、あるいは相続した物件を賃貸に出している、年金暮らしの生活が手いっぱいで大規模修繕など追加費用のかかる話を避けたがる……など、組合の円滑な運営はままならなくなっているのだ。
こうした事態になると、これまで担当してきたマンション管理会社が契約の継続に躊躇するようになる。
マンション管理会社はあくまでも組合運営をサポートする立場に過ぎず、運営に関して何ら決定権を持ってはいない。自分たちが意見具申する修繕やトラブル対応についても理事会や総会で決議してくれない限り、円滑な管理ができない。
特に近時は、人件費のアップなどで、組合からもらう報酬の値上げが相次いでいるが、応じてもらえず管理業務から撤退する会社も相次いでいる。
そして、この隙に入り込んでくるのが、様々な業者やコンサルタントたちだ。