経営者に残された時間は少ない
ここで強調しておきたいのは、AI活用の上手い下手が、そのまま企業の優勝劣敗を決めるわけではないという点です。
重要なのは、AIをどう位置付け、どこまで任せ、どこに人間の判断を残すかという設計思想になります。
これは技術の問題ではなく、経営の問題です。
行政がAIを思考補助として使い始めた以上、企業側にも同じ問いが突き付けられます。
AIに作業を任せるのか、判断の材料を出させるのか、それとも、選択肢の幅を広げる存在として扱うのか、どれを選ぶかで、組織の形は大きく変わるでしょう。
AIは効率化の道具であると同時に、権限設計を変える力を持っています。だからこそ、AI導入を現場任せにしてはいけません。
ツール選定や利用ルールの問題ではなく、意思決定の構造をどう変えるのかという経営判断が先にあります。
日本がAIで国家のかたちを変えようとしている今、企業もまた、自らのかたちを問い直す局面に立たされています。
追随するのか、同調するのか、それとも独自の実装モデルを描くのか、答えは1つではありません。
あおるわけではありませんが、思ったより考える時間は短くなっています。国家が前提条件を動かした以上、経営もまた、前提を書き換える時期に入ったと見るべきでしょう。
それが、いま経営者に突き付けられている現実です。
筆者作成