TikTokでファンがダンスを共有し合う

 K-POPの人気を支えているのは、こうしたSNSだろう。ミュージックビデオを見て真似したダンスを撮影し、そのショート動画をSNSにアップロードすることにより、同じようにダンスを披露しているファンたちとつながっていく。

 そういえば、PSY(サイ)が「江南スタイル」で2012年に世界中に大旋風を巻き起こしたが、そのときも、その楽曲で披露した「乗馬ダンス」を世界で多くの人が真似ていた。K-POPもそれとよく似ている。

 そのなかで最も異なるのは、ダンスの難易度である。K-POPの場合は一般的に、江南スタイルよりもダンスの難易度がはるかに高い。その高度なダンスを練習したファンたちがその成果を披露して、共感しあう場がSNSなのだ。

&TEAM(写真:OSEN/共同通信イメージズ)

 そこで大きな役割を果たしているのが、ショート動画が掲載できるツールとして開発されたTikTokだ。中国共産党との関係から、このアプリの使用に対する懸念が根強いにもかかわらず、韓国でも広く利用されている。

 NHKによる前出の調査には、「最も好きなものや魅力を感じるものについて、情報を収集するときに利用しているメディア」に関する質問の結果(複数回答可)も掲載されている。そのなかでユーチューブ(39%)とリアルタイムで見るテレビ番組(31%)が上位2つを占め、どちらも世代と性別関係なしに広く利用されている。

 一方で、SNSの利用率を見ると、LINEもTikTokもともに8%にとどまっている。性別・世代別に見ると、LINEについてはどの世代であれ性別に関係なく5~11%の範囲内である。

 ところが、TikTokの場合はその分布が大きく異なっている。男性の場合、10代後半が17%と高く、20代が7%、30代以降は5%以下になる。一方で女性の場合は、10代後半がなんと41%と非常に高く、20代が16%、30~40代でも9%、50代になると7%、60代が2%となっている。

 つまり、TikTokの利用率は若いほど高く、しかも、女性の方が高い。これはK-POPに魅力を感じるかどうかの調査結果とおおむね重なっている。言い換えれば、K-POPにピンとこないのは中高年の男性だけに限ったことではない。TikTokに縁遠い男性全体がピンとこないのだ。

 今年も含め、歴代の紅白歌合戦へのK-POPのグループの出場者リストを見ると、NHKの苦悩がうかがえる。女性にとっては、女性グループよりも男性グループの方に魅力を感じる傾向が強そうだということがNHKの調査からもうかがえるが、女性グループの方が多く出場しているからだ。

 男性グループが多く出場すれば、日本人男性から紅白歌合戦からそっぽを向かれる可能性が高くなるということだろうか。女性からも一定の人気がある女性K-POPグループを多めに出場させ、そのなかに男性K-POPグループも混ぜ、何とか全世代に関心を寄せてもらえるようにしているのではと思えてくる。まさに苦肉の策である。

 今年出演する3グループはパフォーマンスでどんな魅力を見せてくれるのか。いや、日本人男性からすると、本当に何が魅力的なのかという白々しさが漂うのかもしれない。それはNHKとしても、頭の痛いところなのだろう。