主要IPの低迷が始まっているディズニーの判断
たとえば、ニュースサイトBusiness Insiderは、音楽業界向けのデータ分析プラットフォームであるLuminateの視聴データを引用し、Disney+における「オリジナル作品」の視聴時間シェアが2025年Q3時点で約3%に低下したと報じた。3年前は約9%だったとされ、プラットフォーム内での「新作を起点とした接触機会」が縮小している可能性を示している。
また別の報道では、Disney+上のMarvel実写シリーズが前年より視聴面で低迷、あるいはStar Wars関連作で初回以降の視聴が減速し、結果として企画の見直しや打ち切りの判断につながった例があると指摘されている。主要IPですら、継続して視聴してもらえていない可能性があるというのだ。
さらに英ガーディアン紙は、若年層(Gen Z)とディズニーの関係を論じる記事において、作品体験の中心がストリーミングや短尺コンテンツへ移るという環境変化が起きる中で、古典的ディズニー作品が「世代の共通知識」になりにくい状況があると指摘している。
こうした状況がある中、若者たちにあらためてディズニーキャラクターたちを認知してもらい、身近に感じてもらう施策。そのひとつが、今回のSora 2へのキャラクター貸し出しというわけだろう。
またネット動画・ユーザー生成コンテンツ全盛の時代に、無許諾の生成・拡散は完全には止めにくく、むしろ正規ルートを用意して対象範囲や安全策、表現上の禁止事項を設計した方が、ブランド毀損や権利侵害のリスクを管理しやすい。
結果として、権利を緩めたというより、守り方をテクノロジーの進化に合わせて現実的に更新した判断だと言える。
そして今回のディズニーの判断は、同様に各種IPを抱え、それをベースとしてビジネスを展開している他の企業にとっても参考となるものだろう。ディズニーの挑戦が成功すれば、より多くのキャラクターたちが、Sora 2に参戦してくるかもしれない。
小林 啓倫(こばやし・あきひと)
経営コンサルタント。1973年東京都生まれ。獨協大学卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業、大手メーカー等で先端テクノロジーを活用した事業開発に取り組む。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』『ドローン・ビジネスの衝撃』『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(日経BP)、『情報セキュリティの敗北史』(白揚社)など多数。先端テクノロジーのビジネス活用に関するセミナーも多数手がける。
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