ディズニーがOpenAIと組まざるを得ない理由
もちろん、Sora 2の動画生成やキャラクター機能については、さまざまな問題点が指摘されている(筆者も以前別の記事で解説している)。
たとえば、OpenAI側はきちんと対処していると訴えているものの、やはり不適切な動画を生成できてしまうという問題が残っており、いくら規制をかけてもユーザー側がそれを乗り越えるプロンプトを編み出すといういたちごっこの状態だ。
ディズニーのキャラクター解禁後、ミッキーマウス(公式発表で解禁後に使用可能になるキャラクターの一例として挙げられている)がとんでもない行為をしている動画が拡散される、などという事態が起きてしまうかもしれない。
そうした事件・事故の可能性は否定できないが、それをいったん脇においたとして、この解禁によってディズニー側にはどのようなメリットがあるのだろうか。
最も期待できるのは、新たな接触機会の提供だ。
「あるブランドがその認知度を上げるために、自社のIP(キャラクターや世界観など)を顧客や消費者に自由に使わせ、接触機会を増やすことを狙う」というプロモーション方法は、これまでもさまざまな企業で採用されてきた。
たとえば、クリプトン・フューチャー・メディアは、同社の歌声合成ソフトのキャラクターである初音ミク、ひいては同ソフト自体を売り出すために、キャラクターIPを非常に緩やかなライセンスで開放する戦略を取った。
非商用は原則自由、一定条件下で商用利用も可能であり、結果としてYouTubeやニコニコ動画でのユーザー生成コンテンツが爆発的に増加した。もちろんそれだけが理由というつもりはなく、キャラクター自体の魅力と相まって、いまや初音ミクはすっかり著名キャラクターとして定着している。
要は初音ミクがYouTubeやニコニコ動画で生み出したような現象を、ディズニーキャラクターたちがSora 2上で再現することを狙っているといったところだろう。
しかし、いまさらディズニーの大人気キャラクターたちを、改めてプロモーションする必要などあるのだろうか。実はさまざまなデータが、ディズニーキャラクターの接触機会(視聴やエンゲージメントの数)が落ちてきていることを示している。